mv mv-sp

CASE93 自転車移動中、暑さでふらつき、ブロック塀に激突!―熱中症が原因の事故にも注意―

2025/08/25 09:00

【事故エピソード】

清掃現場リーダーのAさん(71歳、勤務歴10年)、午前中の現場の作業を終え、昼食休憩を取ったあと12時40分ごろ、次の現場に向かった。
その日は残暑が厳しく、外気温度は32度を超えており、Aさんは徒歩では20分以上かかるので、自転車で移動することにした。住宅街の狭い道路をゆっくりと走っていたが、Aさんは少し頭痛を感じながらも、もう少しで現場に着くと思い、休むことなく自転車を走らせた。
そのとき、前方から乗用車が来たのでそれを避けようとしてハンドルを切ったところ、よろけてしまいブロック塀に激突、転倒。左肩と側頭部の挫傷、足首を骨折する重傷を負ってしまった。
乗用車のドライバーが救急車を呼び、病院に搬送されたがAさんは救急隊員の質問に対し、意識がもうろうとしていて、はっきりとした回答ができなかったという。熱中症の症状が出ていたようであった。

[1]作業現場だけでなく、移動中も注意!

6月のクリニック(CASE91 住民の通報で救急車を手配、大事に至らなかった!―熱中症対策、難しい一人現場の対応―)でも熱中症対策をお届けしましたが、記録的な暑さにより熱中症が多発しています。
さらに今年は9月以降も猛烈な残暑が続く予報なので、改めて取り上げることとしました。

事例のように熱中症は作業現場だけでなく、移動中にも発症する可能性があります。徒歩はもちろん、自転車、バイクなど直接炎天下を移動する場合は、作業現場と同様の予防対策を行いましょう。
また、徒歩や自転車等を使って移動する場合は、熱中症による疾病だけでなく、熱中症に起因する交通事故などを引き起こす原因にもなりますので、自動車や公共交通機関(タクシー含め)など移動手段にも十分配慮しましょう。

[2]監督署への「熱中症等発生状況報告書」の提出

熱中症対策が安全衛生法により規制されることに伴い、熱中症が発生した場合の報告書提出も義務付けられました。報告書に求められる内容は詳細かつ具体的な内容となっています。
記載様式、記載例を添付しましたので、ご活用ください。再発防止対策にも生かせる項目ですから、社内の熱中症対策規程などに盛り込んではいかがでしょうか。
また、熱中症に留まらず、すべての事故の報告書にも共通する項目と考えられますので、災害報告書の見直しに活用していただきたいと思います。

■熱中症等発生状況報告書

   画像をクリックでダウンロード
画像をクリックでダウンロード

[3]発生状況報告書様式から対策を考える

熱中症発生状況報告書が求める記載項目から、熱中症対策を読み解いてみましょう。

❶氏名、生年月日、所属先、業務内容、所定労働時間など(一般的な報告書と同様)

❷発症当日の業務内容、作業環境(作業場所、作業人数、気温、湿度、風、屋外の場合は日陰の有無など)
作業場所が屋外の場合は、休憩時、緊急時に身体を冷やす、休ませる場所として「日陰と風通し」がポイントになりますから、作業開始前に場所の確保が重要です。

❸作業時の服装(衣服だけでなく履き物=頭から足まで)
通気性のよい作業着、日よけ用の帽子の着用。ゴム長靴など通気性が悪い履き物は避ける。

❹当日の休憩時間、休憩場所、水分補給(飲料物の種類)の有無、量
休憩は計画的に行い、管理者、職場リーダーの声掛けで確実に行うこと。
水分補給はその種類(単なる水かスポーツドリンク等)と摂取した量が分かるようにしましょう。各自に任せるのではなく透明なマイボトルなどで摂取量が分かるとよいでしょう。

❺被災者の発症当日の朝、作業中、休憩中の様子
作業時、休憩時の作業者の様子は会話やリーダーのこまめな声掛けで行いましょう。
熱中症の初期症状を見逃さないことです。

❻発症時の作業の詳細、現場の見取り図・写真(一般的な報告書と同様)

❼前日の睡眠時間、飲酒の有無
熱中症は各自の生活習慣も大きく影響を受けます。睡眠時間、飲酒はその代表的なものです。
出勤時のヘルスチェック、朝礼などでしっかりと確認しましょう。

❽被災者の既往症の有無、定期健康診断の受診状況
高血圧症、糖尿病(塩分摂取制限)などの既往症を抱える人は熱中症のリスクも高いようです。重要な個人情報ですから無理に聞き出すことはできませんが、本人の了解を得て作業時間、休憩時間や作業場所の選定など、配慮しましょう。

❾事業場としての熱中症防止対策・手立て 
塩分、水分補給を促し、飲料などの配布を行っている会社も多いと思います。
温度計などの配備、身体を冷やす工夫と器具の配備(保冷剤、氷のう、冷水)。緊急時の連絡先の表示なども有効です。熱中症アラート発令時の作業中止の判断基準も示しておきましょう。

[4]休憩時のプレクーリングを

休憩は身体を休ませることはもちろんですが、積極的に身体を冷やしましょう。次の作業に向かう前に「プレクーリング(※)」が重要です。事例のケースでも昼食を急いで摂って次へ移動、ということで、午前中の作業終了時から体温の上昇が改善されていなかったようです。
体温が37.5度を超える場合は危険性が高まりますので、身体の外からさらに身体の内側(冷たい飲み物)からも冷やしましょう。
※あらかじめ体温を下げておくこと。作業中に体温が上がるのを緩やかにする。

[4]新人者への情報提供と教育

新入社教育には必ず熱中症対策を盛り込みましょう。特に日常生活で対応してきた暑さ対策が作業現場ではなかなか実施できないことが多いので、休憩時間の取り方、過ごし方などしっかりと伝えましょう。
また、入社間もない社員は仕事と暑さに慣れていないだけではなく、体調不良などを気軽に訴えることが難しいです。気軽に話せる環境を整えることです。
特に仕事前のミーティングで体調確認、管理を行うことが重要です。



今回、皆さまの職場でご活用いただくため、「健康+安全クリニック」で人気の記事をまとめた冊子を作成いたしました。冊子データは無料でダウンロードいただけます。詳細は以下のページからご確認ください


コーナー担当者からのお願い
このコーナーで取り上げてほしいテーマや事故事例があれば、どしどしお寄せください。お待ちしております。
リクエストはこちらから