清掃の「匠」になった青年。

清掃人。 第二十九回

福嶋舞斗(28歳) 株式会社第一ビルメンテナンス

2022.7.25 15:00 更新

撮影=立木義浩 文=内野一郎
撮影場所=株式会社第一ビルメンテナンス研修センター(東京都新宿区)

仕事への真心は背筋に現れる。
という指摘を、
筆者はかつて先輩から言われたことがある。
真っ直ぐに伸びた背筋は
正面から仕事に向き合う時の姿勢であり、
すなわちそれは
人に正しく向き合う態度でもあるのだと。
そんなことを撮影場所である
第一ビルメンテナンスの研修センターに現れた、
福嶋舞斗さんの整った立ち姿に接し
不意に思い出した。
高校卒業後、第一ビルメンテナンスに就職し、
同社の環境エンジニアになって10年。
会社主催の技能オリンピック大会にも出場し、
2020年から今年まで3年連続で金賞を獲得した。
いま福嶋さんが袖を通している
ユニフォームの胸元には、
その証しである「匠」の称号が
美しい金糸で刺繍されている。
イカの水揚げ日本一を誇る
青森県八戸市生まれ。
サッカーの大好きな少年で、
高校時代はミッドフィルダーで活躍した。
父親は漁師をしており、
彼の「舞斗(まいと)」という
躍動的で軽やかな名は、
父が名付けてくれたものらしい。
子どもの頃から
東京という都会への憧れが強く、
高層のビルやマンションなどが
その憧れの象徴だった。
だから東京のビルメンテナンスに勤め、
マンションを舞台に
環境整備に取り組んでいる企業に就けたことは
運が良かったと感じているそうだ。
「環境整備の活動というのは
身の周りの環境を整備するだけでなく、
実は自分自身の
心の中の環境を整備することでもある。
ということが
ようやく分かるようになってきました。
それからなんです、
技能オリンピックでも
好成績を残せるようになったのは」
逸ってまわりと競うよりも、内なる心を整える。
美しい背筋の作りかたを、
その日、若き清掃の匠に教わった。

立木義浩(たつき・よしひろ)/1937年、徳島県・徳島市の写真館に生まれる。1965年『カメラ毎日』で掲載された『舌出し天使』が話題となり、一躍世間の注目を集める。女性写真の分野を中心に、多く著名人を撮影。 同時に世界中でスナップ写真を日常的に撮り続け、多くの作品を世に送り出す。主な受賞歴に、日本写真批評家協会新人賞(1965年)、日本写真協会賞年度賞(1997年)、 日本写真協会賞作家賞(2010年)、文化庁長官表彰(2014年)など。