あるマンション管理員の人生。

清掃人。 第二十四回

鈴木正三(75歳) ナイス コミュニティー株式会社 横浜南支店

2022.2.25 21:00 更新

撮影=立木義浩 文=内野一郎
撮影場所=シルクハイム東戸塚(横浜市戸塚区)

東京都心と神奈川県の
三浦半島を結ぶ横須賀線。
その沿線駅の一つ東戸塚に
鈴木さんが管理員を受け持つ
分譲マンションがある。
高校卒業後、日本の高度成長を牽引した
巨大重工業企業に就職。
総務・人事畑一筋に勤め上げ、定年を迎えたのち、
マンション管理員の仕事に魅力を感じ、再就職をした。
2つの管理会社、4つのマンションを経験して
このマンションで5つ目の現場になる。
茨城と福島の県境の山あいにある
矢祭町で育った鈴木さんは、
小学2年まで
電気、水道、ガスのない生活をしていたそうだ。
母は毎日、山の湧水をバケツで運び、
飲み水や自炊に使う。
日が暮れるとランプを灯し、
服は4人兄弟のおさがりを順に着回す。
そんな記憶が脳裏に残っている。
この頃から「もったいない」を実践し、
物を大切に、
知恵を使って道具も作る。
そんな生きかたが自然と身に付いたと語る。
建物内の清掃では
モップや鉄道チリトリなど
さまざまな資機材にも独自の工夫を施し、
高齢者でも使いやすい道具に改良した。
マンション管理員の仕事は
「これまでの仕事の延長という思い」で、
鈴木さんにとって天職のようなものだ。
晴れの日も、雨の日も、
台風の日も、雪の日も、
マンション居住者に寄り添い、
マンション内で居住者が安全に暮らせるよう
建物の隅々にまで目を光らせ、
知恵も身体も使って仕事にあたる。
「明日に延ばさず、直ぐにやれよ」
母の口癖がいまも
鈴木さんの背中を押す。
はたが楽になることこそ、働く極意。
そんな思いで
76歳を迎えた今を生きている。

立木義浩(たつき・よしひろ)/1937年、徳島県・徳島市の写真館に生まれる。1965年『カメラ毎日』で掲載された『舌出し天使』が話題となり、一躍世間の注目を集める。女性写真の分野を中心に、多く著名人を撮影。 同時に世界中でスナップ写真を日常的に撮り続け、多くの作品を世に送り出す。主な受賞歴に、日本写真批評家協会新人賞(1965年)、日本写真協会賞年度賞(1997年)、 日本写真協会賞作家賞(2010年)、文化庁長官表彰(2014年)など。