特別なオリンピック・パラリンピックの夏と、私。

清掃人。 第二十一回

佐藤彩音(24歳) 太平ビルサービス株式会社 東京支店

2021.10.28 12:00 更新

撮影=立木義浩 文=内野一郎
撮影場所=晴海大橋(東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会選手村付近/東京都中央区・江東区)

ここは
東京都中央区と江東区の間に架かる
晴海大橋の中間地点。
橋下を流れる晴海運河の右岸に見えるのが、
私がハウスキーパーとして働く
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会
選手村の建物群だ。
この仕事の面白さに目覚めたのは
高校三年の夏。
母がホテルの客室清掃の仕事をしていたことから、
私も夏休みのアルバイトで
ベッドメイクを手伝ったのだ。
そこでシーツやピローなどの寝具を整え、
シワひとつない
美しいベッドメイクを仕上げる喜びを知った。
同時に母の仕事に
深い敬意を持つようになった瞬間でもある。
その時から
ビルメンテナンスの世界に飛び込んで
今年で6年。
まさか自分が
世界中のさまざまな国から集まった
一流アスリートたちが宿泊する選手村の、
ハウスキーピング業務リーダーに
抜擢されるなんて、夢にも思わなかった。
鮮やかなオレンジ色のユニフォームに腕を通し、
アクレディテーションカードを装着し、
丹念に清掃と除菌を行いながら
選手たちの部屋をハウスキーピングする。
マスク越しではあるけれど、
時おり笑顔の瞳で
「ありがとう」と感謝される。
それはまるで、特別なギフトのようだ。
母親から学び成長した自分、
今はチームという
新たな学びと共有できる仲間がいる。
今年の夏から、あの夏の自分へ、
私はエールを送りたい。
おーい、彩音。
キミは今でも、楽しく頑張ってるぞー!

立木義浩(たつき・よしひろ)/1937年、徳島県・徳島市の写真館に生まれる。1965年『カメラ毎日』で掲載された『舌出し天使』が話題となり、一躍世間の注目を集める。女性写真の分野を中心に、多く著名人を撮影。 同時に世界中でスナップ写真を日常的に撮り続け、多くの作品を世に送り出す。主な受賞歴に、日本写真批評家協会新人賞(1965年)、日本写真協会賞年度賞(1997年)、 日本写真協会賞作家賞(2010年)、文化庁長官表彰(2014年)など。