CASE90 フォークリフトに乗って管球交換作業中、落下して死亡!―誤使用では済まされない、正しい作業で事故をなくそう―

【事故エピソード】
3階建ての資機材倉庫の設備、清掃を担当するAさん(58歳、男性)、常駐スタッフ3人のリーダー役を務めている。倉庫の作業員から2階の天井部にある電気が切れていると言われ、交換の準備を始めた。
天井の管球交換作業には高所作業用のローリングタワーを設置して行うことになっていたが、他のスタッフはゴミ出しの作業で手が離せそうになかった。そのことを倉庫の作業員に伝えると、「フォークリフトを使えば届くのでは」と言われ、現場に向かった。
天井高は5mほどあり、フォークリフトのつめを3mまで上げてもちょっと足りなそうだった。フォーク作業員から、荷揚げ用のパレットを5枚ぐらい重ねればいけるだろうと言われ、それに従った。
パレットに乗って作業を始めたAさん、照明のカバーを外そうとしたがちょっと位置がずれていたので、少し移動するよう頼んだ。その時、重ねたパレットがズレ、バランスを崩したAさん、3.5m下の床に落下し、死亡した。
[1]実際はこんな事故が!
こんなことをする人がいるの? と思われるかも知れませんが、今回の事例はビルメンテナンス業ではありませんが、昨年、山梨県で起きた事故を参考にしています。
実際の事故は、フォークリフトのパレットを45枚積み重ねた上に作業員を乗せてフォークリフトで8mの高さまで持ち上げ、天井の電球を取り換える作業をさせていたところ、50代の作業員がバランスを崩し転落、死亡したというものでした。
パレットだけでも高さは4~5mになると思われ、その不安定さは想像を超えます。事故後、事業所を管轄する労働基準監督署は、会社と作業を指示した45歳の課長を労働安全衛生法違反の疑いで書類送検しています。
[2]相次ぐ誤使用による重大事故
フォークリフトの不正使用の事故は後を絶たず、今年5月には、長崎県波佐見陶器まつりの陶器工場で、開催された陶器祭りの垂れ幕をフォークリフトに乗って撤去しようとして、66歳の男性従業員が3m下の地面に落下、死亡するという事故が起きています。
もしかすると、垂れ幕の設置作業でもフォークリフトを使用していたのではないでしょうか。高所作業車をレンタルする、外部の業者へ委託するには手間も、費用もかかるのでこれくらいの作業なら手っ取り早く済ませられると、関係者は考えたのではないでしょうか。その代償はあまりにも大きいものとなってしまいました。
[3]子どもを巻き込む重大事故も
子どもをフォークリフトのつめにのせて移動中、子どもが振り落とされて死亡する事故が2021年滋賀県で、さらに、今年4月茨城県でも全く同じような事故が起きています。
過去には、フォークリフトのつめにベルトを巻いてブランコのようにして遊ばせていて転落、死亡させるという痛ましい事故も起きています。こうした事故は労働災害ではありませんが、運転者は当然、自動車運転処罰法により罰せられます。
[4]知っているのに、できるのに、やらない・守らない?!
法律や職場で独自に決められているルール、それを守らないことによって大きな事故が発生します。フォークリフトに人を乗せてはいけないことについて、設備員Aさんは知らなくても、フォークリフトの運転者は技能・安全教育を受けていますから知っていたはずです。
まさに、「知っているのに、できるのに、守らなかった」ために、起きた事故です。このケースは単なる誤使用や勘違いといったヒューマンエラーとは異なります。
以下の3つのポイントでルールの徹底対策を考えましょう。
| ポイント | 要因 | 説明項目 |
|---|---|---|
| ❶知っていたが、危ないとは思わなかった | ・危険に対する認識、感受性が不足 |
・フォークリフトの死亡事故は年間20~30件発生。 ・事故の内容は、荷台部分からの墜落・転落、マストとヘッドガード部の挟まれ、急旋回した際の横転事故など。 ・運転者にはシートベルト着用が義務づけられ、むやみに運転席を離れられないように対策されている。 ・ こうした事故事例を繰り返し教育、指導しましょう。 |
| ❷知っていたが、ついやってしまった |
・時間がない ・ちょっとだけ ・頼まれたから、仕方なく |
・危ないことと知りながら、つり上げた荷がズレたり、落ちそうになったりして、それを直そうとしてリフトに上り転落する、というケースが多く、「時間がない」、「ちょっとだけだから」、が事故につながっている。 ・荷の積み方やフォークリフトの操作方法(急旋回、急停車など)に問題があるケースが多く、基本作業の修得を繰り返し行いましょう。 ・異常時には、一呼吸入れ、必ず危険が無いかを確認して行いましょう。 ・ 「ちょっとだから」と頼まれる(指示される)ケースもあると思いますが、法違反行為であることを説明し、毅然と断りましょう。 |
| ❸知っていたが、守る気が無かった |
・自信過剰 ・成功体験 |
・「気を付ければ人を乗せても落とさないで操作できる自信がある、何回か乗せて上手くいっている」といった自信や過去の成功体験がルール違反の温床にある。 ・自己流の考え方を改めることは難しいが、根気よく、 自信が過信になってしまうこと、事故が人命にかかわること、安全は自分、仲間、会社の為であることをしっかりと伝えましょう 。 |

公益社団法人全国ビルメンテナンス協会
広報委員会 委員
阿部研二さん
1977年中央労働災害防止協会に入社。健康快適推進部長、出版事業部長を経て、2019年5月まで常務理事。
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