人間の大切な水脈を清掃する。

清掃人。 第二十三回

大地勝(41歳)・葛西生雄毅(33歳) 株式会社敬隣舎

2022.1.17 18:00 更新

撮影=立木義浩 文=内野一郎
撮影場所=高齢者施設(東京都板橋区)

人間が都市を発明して以来、
なくてはならない2つの水脈を
われわれは装置化してきた。
それが上水道と下水道。
飲み、食べ、排泄する
集団の営みを続けるために用意した、
飲み水の道と
し尿や食の残渣を洗い流す道である。
世界各所に見つかった人類社会の遺構にも
この水路の跡がしっかりと残されている。
東京のある冬の寒い日、
板橋区にある高齢者施設で彼らに出会った。
施設裏の一角に
青いバキュームカーが静かに止まると
運転席、助手席それぞれのドアが開き、
一人が手元に道具を揃え、
もう一人がタンク上の台からホースを下した。
「今日の仕事は?」と聞くと
「汚水槽清掃です」と
先輩格の男性が淡々と答える。
彼らが勤務するビルメンテナンス会社は、
給排水設備、貯水槽の清掃が専門。
創業は汲み取りから始まったそうだ。
鉄製の重いフタが持ち上げられ、
敷地に穿たれた穴が現れる。
一緒に覗きこむと、
地下から上昇してくる空気の流れが
独特な臭気を運びマスク越しにも感じられる。
思わず顔をしかめると、
「槽内はもっときついです」と二人が笑う。
清掃が求められる場所は、
床やガラスなどの目に映る空間だけではない。
彼らが相手にする
ビルピットと呼ばれるビルの地下排水世界。
表からは視えない場所、狭い場所、
そこでの仕事は危険をともない、
身体への負担も多いようだ。
「やり甲斐の源は?」と再び問うと、
「現場に立ち会っていただいた
お客さまからの労いと感謝の言葉です」
太古の都市社会にも
彼らのような清掃人が、
きっと存在していたはずだ。

立木義浩(たつき・よしひろ)/1937年、徳島県・徳島市の写真館に生まれる。1965年『カメラ毎日』で掲載された『舌出し天使』が話題となり、一躍世間の注目を集める。女性写真の分野を中心に、多く著名人を撮影。 同時に世界中でスナップ写真を日常的に撮り続け、多くの作品を世に送り出す。主な受賞歴に、日本写真批評家協会新人賞(1965年)、日本写真協会賞年度賞(1997年)、 日本写真協会賞作家賞(2010年)、文化庁長官表彰(2014年)など。