CASE68 ハチ刺され事故にご用心! ―転倒、転落の原因になることも―
マンション管理業務担当のAさん(65歳)は、駐輪場付近の植栽が伸びてきたので刈り込もうと脚立(高さ約180cm)に乗って剪定を始めた。
しばらく作業を続けていると突然大きなスズメバチが襲ってきたので、あわてて逃れようとした時、思わずバランスを崩し脚立から転落、持っていた剪定ばさみで腕を少し切り、さらに左足首の腓骨を骨折してしまった。
スズメバチ、アシナガバチは巣作りのため7月ごろから活動が活発になり、巣に近づいたり、刺激を与えると猛然と攻撃してきます。この季節は草刈り作業など、屋外作業も多く、ハチ刺され事故の報告も多くなります。
刺された場合、アナフィラキシーショックで死に至ることもあります。また、事例のようにあわてて逃げようとして脚立、階段から転倒する、道路で転倒するなど、事故の原因となることもしばしばです。ハチくらいと、決して侮ってはいけません。しっかりと防止対策を実施しましょう。
[1]ハチ刺されで毎年10~20人が死亡 -アナフィラキシーショック
下表のように、ハチ刺され事故で毎年10~20人が亡くなっています。ハチ刺されによる死亡例は、ほとんどがアナフィラキシーショックが原因です。
アナフィラキシーショックとは、薬物等のアレルギー反応で極めて短時間(数分~30分以内)に起きる呼吸困難や血圧低下などの生死に関わる重篤な症状を伴うものです。ショック症状は、顔を含む頭部や頸部を刺された場合に多く発症し、極めて短時間(刺傷後数分~10数分)で症状が現れます。
▼ハチ事故による死亡者数
| 平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | |
| 死亡者数 | 19 | 13 | 12 | 11 | 13 | 15 |
[2]ハチ刺され事故防止対策
予防対策の一つは巣の除去ですが、4月から5月の比較的ハチのおとなしい時期に行いましょう。活発になってから発見した場合は、専門家に任せるか、防蜂網の着用、蜂の殺虫スプレーなどを準備して慎重に行いましょう。
予防・防衛策の基本は、まず刺されないことです。そのためには、巣に近寄らない、刺激を与えない、近くで作業をしないことです。蜂刺されのおそれのある場所で作業する作業者は、あらかじめ蜂アレルギーの検査または診察を受けておくと良いでしょう。ハチに刺されなくても、突然現れて逃げようとして脚立から転落、や道路で転倒する関連事故もたくさん発生しています。落ち着いて行動することを心がけましょう。
ハチ刺され事故の危険のある作業では、作業前に以下の防止対策チェックポイントを確認しましょう。
▼ハチ刺され事故防止対策チェックポイント
| レ | 確認事項 | |
| □ | 1 | 作業前に作業場所のハチの生息状況を確認すること。 |
| □ | 2 | 巣を見つけた場合は、振動等の刺激を与えないようにし、除去するまでは巣の近くでの作業は避けること。 |
| □ | 3 | 作業中にハチが近づいてきた場合には、あわてずに、速やかに遠ざかること。 |
| □ | 4 | ハチを刺激しない服装等で作業すること(スズメバチの場合、黒地の着衣等や香水、化粧品等で匂いのするものも避ける)。 |
| □ | 5 | ハチが毎年発生する場所等で作業を行うときは、顔面を保護する防蜂網および防護手袋等を着用すること。特に、蜂アレルギーのある者は必ず着用すること。 |
| □ | 6 | ハチの殺虫剤スプレーを携行すること。 |
| □ | 7 | ハチに刺されたときの救急措置を周知すること。 |
[3]ハチに刺されたときの対応と措置
ハチに刺された場所が巣の近くなら、速やかに巣から離れましょう。1匹のハチに刺されると毒液(興奮物質)が空中にまき散らされるため、多数のハチの攻撃を受けることがあり危険です。
ハチに刺されたときは、次のように処置しましょう。
○傷口を流水(水道水など)でよく洗い流し、手で毒液を絞り出すようにします。水で洗うことは毒を薄める効果と傷口を冷やす効果が期待できます。
○患部に虫刺されの薬(抗ヒスタミン軟膏)を塗ります。アンモニアはまったく効果がありません。
○手や足を刺された場合は、心臓に近い方を止血ゴム管等でしばります。ただし数分間隔でゆるめます。
以上の処置を施した後、できるだけ速やかに医師の診察を受けてください。
※初期症状として、発疹、流涙、せき、嘔吐、下痢等の症状が見られる場合は、⼀刻も早く医師の手当てを受けるようにします。
※ショック症状(意識がもうろうとしたり、呼吸困難、血圧の低下)があれば緊急を要します。すぐに119番通報し、救急車を要請してください。
【今月の記事は、林業・木材製造業労働災害防止協会ホームページを参考としています】

公益社団法人全国ビルメンテナンス協会
広報委員会 委員
阿部研二さん
1977年中央労働災害防止協会に入社。健康快適推進部長、出版事業部長を経て、2019年5月まで常務理事。
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