- 仲間と一緒に体育館の照明交換作業を行なっていたAさん(41歳)。屋根裏での作業を進める中で、照明器具の設置状況を確かめようと、安全対策として設置された歩み板から断熱材の上に体重をかけた瞬間、Aさんは15メートル下の床に転落し、死亡した。ヘルメット、命綱は装着していなかった。
CASE48
天井裏には危険がいっぱい! 作業前に必ずKY、リスクアセスメントを
2021/12/8 12:00 更新![]()
屋根裏での作業中に、歩み板から外れた場所に足をかけたために墜落した。
高所作業中の墜落事故が多発中
紹介した事例は、今年9月に神奈川県で発生した転落事故を参考にしています。実際の事故は、市の公共施設の照明のLED化工事で発生しました。工事は作業員6人で3日間の予定でしたが、開始間もなく、初日の午前10時半過ぎに起きました。事故の詳細は明らかではありませんが、設置された作業帯(幅85㎝、高さ80㎝の柵)を乗り越えて転落しました。事前の危険予知やリスクアセスメント、安全対策に問題はなかったのでしょうか?
同じく今年7月には、東京日本橋の地下鉄駅近くのビルで、設備の点検中に天井パネルごと10m下のビルエントランスに落下するという事故も起きています。地下鉄の入り口付近での事故でしたが、幸い、作業者も、また歩行者にも死亡者は出ませんでした。
同様の事故として、住宅や倉庫の屋根の修理中に、スレートや樹脂製の天井板を踏み抜き転落する事故が毎年のように報告されています。令和2年の起因物別死亡事故の発生状況(厚生労働省「職場の安全サイト」労働災害統計)を見ると、「屋根・梁・けた」「作業床・歩み板」の合計で34人(全体で802人中)の死亡事故が起きています。平成30年の台風19号、20号、21号による被災においても、屋根の復旧作業で多くの人が亡くなっていますが、原因の多くは「スレート屋根の踏み抜き」による事故でした。
清掃作業でも、ガラス製の屋根や明り取り用の窓の清掃中に誤って踏み抜いたりする事故が発生しています。
「丈夫そうに見える」が落とし穴
一見丈夫そうに見えるスレート屋根や樹脂製の波板を渡ろうとして踏み抜く事故、まさに「落とし穴」になっています。屋根、天井裏で作業、移動する場合の鉄則は、梁の上や吊りボルト付近、壁近くなど他よりも少しでも強度の高い部分を選ぶことです。
さらに、事前に図面(設計図、配線・配管図など)でこうした強度を確認し、作業時間を要する場合は、歩み板(あゆみいた:人が渡ることを目的として物と物との間に架け渡した板。工事現場では通行のために敷かれる仮設の足場のことを指す。木製、金属製、アルミ製のものがある)を設置するなどして、安全通路、作業床を確保しなくてはなりません。
十分な作業姿勢も取れない天井裏は危険がいっぱい!
一般的に天井裏は危険性が非常に高い場所です。電気、電話などのケーブルが張り巡らされていて、水道やガスなど色々な配管もあります。そして、天井裏は人が入ることを想定していないため、ホコリがひどく、木材などの部材がささくれ立っていたり、壁もコンクリートは打ちっぱなしで養生がされていません。電線コードがむき出しのままだったり、梁や天井を支える金具やくぎ、針金などがとがって飛び出していたりするケースもあります。作業姿勢もよくて中腰、多くは腹ばい移動が当たり前です。
こうした状況から、転落事故以外にも、感電、切れ・こすれ、腰痛、眼への障害など事故の要因がいっぱいで、作業には悪条件が揃っています。原則は天井裏に入らない事とし、止むを得ない場合のみ、あらかじめ決めた作業手順、災害予防に従う措置としましょう。下記の災害防止のポイントを参考にしてください。
基本事項具体的事項作業上のポイント
|
1 |
・原則、天井裏作業は禁止とする。 ・やむを得ない場合に、右欄の各種措置を講じて許可する。 |
・図面(配管図、配線図、施工図)の入手が可能なこと。 ・作業機器(照明、投光器等)の使用が可能なこと。 ・脚立、梯子が使用できること。 ・歩み板(足場)が設置できること。 |
・作業責任者の立会いが出来ること。 |
|---|---|---|---|
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2 |
・作業計画を作成する。 | ・作業内容、作業範囲を明確に示す。 ・危険個所への立入禁止措置や踏み抜きによる墜落防止措置をあらかじめ講じる。 |
・作業区域に第三者が立ち入らない措置を行う。 |
|
3 |
・転落、踏み抜き対策を実施する。 | ・作業における安全のポイントを作業手順書に盛り込む。 ・歩み板(足場)板、防護ネットなどを手配する。 |
・現場責任者により、安全な作業方法の指示を行う。 ・ヘルメット、命綱、保護メガネなどの保護具を装着する。 |
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4 |
・安全衛生教育を実施する。 | ・作業者の危険感受性を高めるための効果的な危険予知ミーティングを行う。 | ・作業前KYと指差し呼称による危険・安全状態の確認を行う。 |

公益社団法人
全国ビルメンテナンス協会広報委員会 委員
阿部研二さん
1977年中央労働災害防止協会に入社。健康快適推進部長、出版事業部長を経て、2019年5月まで常務理事。
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