CASE104 たまに行う作業で事故が多発! ― 丁寧な作業指示と作業前KYを実施しよう ―

学校施設の清掃を担当するA子さん(63歳、業務歴2年)は、夏休み期間中に日常の清掃範囲でない地下機械室などの清掃を担当することになりました。このような場所は今まであまり経験がなく少し戸惑っていました。作業当日、清掃リーダーから清掃範囲の説明と日ごろ使っている清掃器具に加え、パイプの裏側など手の届きにくいところを掃除するブラシを渡され、作業を始めました。ところがパイプの奥に溜まったホコリは油分を含んでいて、渡されたブラシではうまく取れませんでした。もっときれいにしたいと思ったA子さん、ウェスに洗剤を付けて、素手で拭き取ろうとしたところ、誤って手首がパイプの隙間に入り、抜けなくなってしまいました。焦ったA子さん、無理に手を引き抜いたとき、右手首を脱臼してしまいました。
[1] たまに行う作業で事故が多い訳は
夏休み期間を利用して、日常清掃以外の場所を清掃することがあります。こうした作業は日常あるいは定常作業と区別し、「非定常作業」と呼ばれています。この非定常作業時に多くの事故が発生しています。その主な理由として以下のようなことが考えられます。
①作業手順が定められていない
②作業条件、環境が悪い。例えば、高い、狭い、暗い、暑い場所など。
③日常業務と一緒に実施することもあり、時間がない、人手が足りない
④その作業を経験した人や精通している人がいない(少ない)
⑤決められたルールが守られていない、保護具が着用されていない
今回の事故も、①から⑤までのいくつかの項目が当てはまります。
*非定常作業の安全については、今月配信している安全・健康のツボでも取り上げていますので、そちらもぜひ参考にしてください。
[2] 作業者の指名と指示は慎重、丁寧に
今回の事例のように、年1、2回不定期に清掃作業の場合、まず第一に誰にその仕事をしてもらうかを考えます。優先順位はその作業の経験者を指名することですが、経験者がいない場合は、以下の項目に注意して事前教育、準備をしましょう。
①仕事の割り当てや注意事項をしっかりと伝える。
②作業者の能力(経験、技能、体力)を考え、実行できる内容とする。
③作業内容を分かり易く、絵や写真を交えて説明、作業者にもメモをさせる。
④指示した内容が相手に伝わったか、理解されたか、復唱させて確認する。
今回の事故では、清掃リーダーの指示があいまいで、渡した器具(柄付きのブラシ)の使い方の説明もありませんでした。
事故の状況から考えると、油分の含んだほこりは機械室などでは多くの箇所にあることが予想されます。その除去方法として、
①専用の洗剤を使いしばらく放置し油汚れを浮かしてから清掃する。
②狭い場所での作業では、無理に手を入れず、柄付きのブラシを使う。
③ブラシが使いにくい場合は、別の柄のついたスポンジなどを使用する
といった対策が考えられます。作業指示の際にこうした内容を伝えるべきでした。
また、A子さんのように「きれいにしなければいけない」という意識が高い人、作業に一所懸命な人ほどつい無理をしてしまい、事故に遭い易い傾向にあります。特に経験のない作業ではこうした意識がより強くなることが考えられますので、「きれいにするレベル」を示してあげるとよいでしょう。
[3] 作業前にKYを実施しましょう
非定常作業では作業前の危険予知訓練(KY)を必ず実施しましょう。作業者と管理者、責任者が一緒に行います。今回の作業にどんな危険が潜んでいるか、みんなで考え、意見を出し合います。対策がすぐには具体化できなくても、「こんな危険がある!」と自覚するだけでも事故の防止につながります。もちろんKYは日々の作業においてもぜひ実施していただきたい活動です。
清掃では、1人作業現場も多いですから、1人でもできる「自問自答KY」を取り入れましょう。以下のようなチェックカード(シート)を使って、今日の作業に危険な状況、箇所がないかを、自問自答しながら行い、「触れない、立ち入らない、電源を切ってから作業する」など作業者自身でできる対策を実行してもらいましょう。チェック項目は現場の声を反映させながら、職場独自のものを作るとよいでしょう。
自問自答1人KYのチェック項目(参考例)
| 事故の型 | 危険個所・内容 | |
|---|---|---|
| ① | 落ちないか、転ばないか | 高所の作業や床の汚れの多い場所 |
| ② | 切れ、こすれないか | 使用する工具や設備の突起物 |
| ③ | はさまれないか | エレベータードア、玄関の自動ドア |
| ④ | やけどしないか | 高温になっている設備や給湯器の湯 |
| ⑤ | 巻き込まれないか | プーリーなど回転している機械設備 |
| ⑥ | 腰を痛めないか | びん類などの重いケース、書類、書籍の廃棄物 |
| ⑦ | その他ないか | コンセントなど感電の危険がある場所 |
[4] 点検作業時の異常時、緊急時の対応を手順化しましょう
非定常作業は計画・実施前に以下の項目について作業条件のチェックを行いましょう。
非定常作業の計画・実施前の条件チェック表
| 1作業場所 |
*作業を行う場所が違っていないか? *作業内容に追加・変更がないか? |
| 2作業方法 |
*計画通りの方法で作業できるか? *手順が変わっていないか? |
| 3作業者 |
*資格者が担当しているか? *要員に不足はないか? |
| 4保護具 | *適正な保護具は付けているか? |
| 5設備異常 |
*油漏れ、ガス漏れはないか? *異音・異臭はないか? |
| 6作業工程 |
*作業時間が遅れて焦っていないか? *自己判断で作業を追加してやろうとしていないか? |
| 7作業環境 |
*作業可能な天気、気温か? *作業場が暗くなってないか? |
| 8全体管理 |
*建物側に作業について連絡しているか? *他の作業(他の工事や修繕)情報を確認しているか? |
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公益社団法人全国ビルメンテナンス協会
広報委員会 委員
阿部研二さん
1977年中央労働災害防止協会に入社。健康快適推進部長、出版事業部長を経て、2019年5月まで常務理事。
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