外国人材受け入れの成功法則!採用前から定着までの必須知識
労働力人口の減少による人手不足は深刻化しています。中小企業の外国人材採用のニーズは依然として高く、外国人材は企業の成長に不可欠なパートナーとなっています。しかし、企業の受け入れ準備不足や言葉の壁、文化の違いなどから現場にトラブルや混乱を招き、採用した人材が早期に辞めてしまうことも少なくありません。
この記事では、企業が外国人採用をする際のメリット・デメリット、定着してもらうための育成定着支援についてのポイントなどを解説していきます。
●ビルメン業界における外国人採用の「現在地」
ビルメンテナンス業界はほかの業界と比べると、景気動向の影響を比較的受けにくい業界ではあります。日本人では集まりにくい深夜帯の清掃業務などにおいて、勤勉に働く外国人材が大きな支えとなっています。
一方で「言葉が通じないのでは?」「すぐに辞めてしまうのでは?」という不安や懸念など課題も多く抱えています。しかしこのような課題は、受け入れ企業の適切な知識と準備によって解消できるものです。
大切なのは、外国人材の採用における自社のメリット・デメリットを正しく理解し、人材を見守り、自社に合った受け入れ態勢の構築をしていくことです。
●外国人採用のメリット・デメリットを公平に見る
ここでは、外国人材を採用する上で期待できるメリットと、直面し得るデメリットについて説明します。
外国人採用のメリット
外国人材を採用する最大のメリットは、少子高齢化により不足する意欲的な若い労働力を確保できること、また日本人とは異なる発想や気づきにより職場の活性化やイノベーションの創出につながることです。
外国人材は「日本で技術を学びたい」「キャリアを築きたい」という高い上昇志向を持っていることも多く、その真摯な姿勢は日本人社員にも良い刺激を与え、現場全体の活性化や生産性向上をもたらします。さらに中長期的な視点では、母国の文化と日本のビジネス環境の双方を理解する将来のリーダー候補や、グローバル展開の足がかりとしての活躍も期待できます。
外国人採用のデメリット(課題)
外国人採用には、特有の課題や留意すべき点もあります。
実務面では、在留資格の申請や更新など複雑な事務手続きが必須となるため、専門知識の習得や外部専門家との連携が必要です。現場においては、言葉・文化的背景、価値観の違いによるコミュニケーションの齟齬が生じるリスクがあり、受け入れ側の心理的不安や困惑を招く場合もあります。
「こちらの指示が伝わらないのではないか」といった現場の不安を解消するには、事前の教育環境や体制整備が不可欠です。外国人材を単なる安価な労働力と見なすのではなく、共に成長する仲間として迎える心構えを持つことが重要です。互いの違いを尊重する姿勢こそが、結果として相互理解を深め、離職を防ぎ、企業の持続的な成長へとつながるのです。
●採用前に知っておきたい「制度」と「窓口」
外国人材採用を成功させるには、自社が外国人材採用する目的と、それに適した在留資格制度とを正しく「合致」させる必要があります。
特定技能・技能実習・留学生の違い
外国人が日本に在留するためには在留資格が必要です。在留資格ごとに行うことのできる活動内容が決まっており、就労が可能な在留資格と、就労が認められない在留資格に分けられています。
・特定技能
深刻化する人手不足に対応するため、16分野について一定の専門性・技能を有する即戦力となる外国人材の受け入れを可能にする在留資格です。
・技能実習
母国への技能等の移転による国際貢献を目的とした在留資格で、外国人が日本の産業や職業上の技術・知識を働きながら学ぶためのものです。
・留学生の就労
留学の在留資格では原則として働くことはできませんが、「資格外活動許可」を取得することでアルバイト就労が可能になります。週28時間以内、夏季休暇など教育機関が学則で定める長期休暇期間中であれば、入管法令上1日8時間以内の就労が認められています。
ただし、育成就労制度の施行に伴い、技能実習制度は廃止となります。育成就労制度は2027年施行予定です。
経過措置として、①施行日前に入国し、施行日時点で現に技能実習を行っている場合、②施行日前に技能実習計画(施行日から3か月以内に開始)の認定申請をしている場合、については施行日後も技能実習の実施が可能となります。
登録支援機関と行政書士の使い分け
外国人材の受け入れには、多くの書類手続きが伴います。入管法の遵守が求められ、多くの手間がかかる複雑な書類の準備を整えて、出入国在留管理庁(入国管理局)に提出し、許可をもらわなくてはなりません。書類作成、提出には時間と労力がかかり、また書類の不備があれば提出しても不許可、不法就労助長罪などのリスクを招く恐れがあります。
そのため自社だけではなく、外部の専門機関を利用することをおすすめします。
・登録支援機関
「特定技能」で外国人材を受け入れる際に義務付けられる、支援業務(生活フォローから入管への定期的報告までの10項目)を代行できる機関です。
・行政書士
在留資格申請と法的判断の専門家であり、適切な在留資格の選定や、複雑な申請書類の作成代行をしてくれる「申請取次」の資格を持ちます。
・無料相談窓口
無料の公的な相談窓口としては、ハローワーク(外国人雇用サービスセンター)、外国人技能実習機構があります。また申請書の書き方や必要書類についての質問は、出入国在留管理庁の外国人在留総合インフォメーションセンターなどがあります。
フルタイムの若手」か「短時間のアルバイト」か
外国人材採用を成功に導くうえで重要なことは、人材の属性という「誰を雇うか」ではなく、「どんな仕事を任せるか」を明確にして逆算することです。
将来的にリーダー候補としての活躍を期待する場合や、専門的な知識、スキルを要し継続的に能力を蓄積する必要がある業務なら、特定技能や「技術・人文知識・国際業務」といった在留資格を持つフルタイムの人材が適しています。
一方で、ルーティンワークや特定の時間に集中する定型業務であれば、週28時間以内という制限がある資格外活動での短時間雇用が現実的な選択肢となるでしょう。
そのため雇用形態の決定にあたっては、まず自社の業務内容を棚卸しし、判断力や専門性が必要な領域なのか、あるいはマニュアル化できる定型業務なのかを見極めなくてはなりません。
このように業務の性質から逆算して雇用形態を導くプロセスが、採用後の後悔や現場でのミスマッチを防ぎ、外国人材が最大限に能力を発揮して定着するための一歩となります。
●文化と言語の壁を乗り越える「現場の工夫」
外国人材を受け入れるにあたり、社内意識の醸成は必須です。そのためには外国人材を受け入れる目的や役割などを、トップから全社員に共有するとよいでしょう。
とはいえ「言葉が通じない」「習慣が違う」などの現場の不安は避けて通れません。こういった壁は個人的な努力ではなく、目に見える仕組みと相互理解を促進するコミュニケーションによって解決すべきです。ここでは、組織全体の安心感と一体感を築く具体的な方法を解説します。
やさしい日本語を心がける
外国人材と話すときは、日本人と同じ会話のスピードや専門用語、慣用句などを使うのではなく、より簡単な日本語に置き換えて伝える必要があります。
「やさしい日本語」は外国人などにもわかるように配慮された、簡単な表現の日本語です。こういったガイドラインを参考にするとよいでしょう。
参考:文化庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドラインほか」
また、日本語で相手に伝わりやすくするための3つのポイント「ハサミの法則」もあります。
ハ:はっきり言う
「~です」「~ます」など、語尾まで明確に発音します。曖昧な語尾(「~かも」「~だけど」)は避けます。
サ:最後まで言う
「片づけておいて」ではなく「これを片づけてください」など、省略せずに何をどうするかを具体的に伝えます。
ミ:短く切る
「①をやってから②を確認して、終わったら③に報告して」という長い文章は混乱を招きます。「まず①をします。次に②を確認します。最後に③に報告します」というように、一文を一動作に区切ることで明確に伝わります。
二重否定、オノマトペ、曖昧表現などは外国人材にとって理解が難しいので、現場では避けましょう。
・二重否定
NG例「~に行かないわけにはいかない」→言い換え「~に行ってください」
・オノマトペ
NG例「ピカピカに磨いて」→言い換え「汚れがなくなるまで磨いて」「光るまで磨いて」
・曖昧表現
NG例:「午後イチに」→言い換え「今日の午後1時までに」「昼休みが終わったらすぐに」「午後の仕事が始まったら一番初めに」
視覚情報をフル活用する
言語の壁を解消する方法として、文字によるマニュアルだけに頼るのではなく、目で見て理解を促進する仕組み、つまり視覚的情報の活用が効果的です。
例えば、作業現場に掲示するPOP(標準作業手順書)には必ず写真を添え、「正しい状態」と「悪い状態」を並べて表示します。これなら、言葉だけでは伝わりにくいOKとNGの判断基準を一目で誰でも理解することができます。
また、言葉で説明しにくい動作の細かな動きやタイミング、作業のコツなどについては、15~30秒程度の短い動画を作成します。動画にアクセスできるQRコードを作業現場に掲示すれば、スマホで即座に確認できます。
「違い」を否定せず仕組みで包み込む
外国人材に貢献してもらい定着してもらうためには、単なる労働力の確保ではなく、人材が「この会社でずっと働きたい」と思える人間関係、環境作りが不可欠です。
特定の宗教行事や生活習慣を特別視するのではなく、あらかじめ現場の共通ルールとして明文化することで、混乱を防げます。
・宗教や文化への配慮(一例)
例えばイスラム教徒の「お祈り」であれば、1回10〜15分程度の時間と、会議室の片隅や倉庫の一部など人目が気にならない静かなスペースを一時的に貸し出すといった対応が挙げられます。現場の状況に合わせた柔軟な運用がポイントです。
・食文化への対応
豚肉やアルコール、あるいはベジタリアンなど、個々の信条による食事制限への配慮です。社内イベントなどの際は多様な選択肢を用意することで相互理解が深まります。
・カレンダーによる可視化
社内カレンダーに各国の祝日や主要な行事期間を記して掲示することも有効です。日本人スタッフも「なぜいま彼らに配慮が必要なのか」を自然に理解できます。
価値観の違いを否定せず、互いに尊重し仕組みとして包括することで、誰にとっても安心・安全な居場所となるのです。
●まとめ:外国人材が「長く働きたい」と思う会社を目指す
外国人材の受け入れを成功させ、企業の成長に貢献してもらうためには、労働力の確保ではなく、この会社でずっと働きたいと思える環境づくりが鍵となります。長く働きたいと感じてもらうための重要なポイントは、メリットの理解・制度の把握・違いを包み込むコミュニケーションの3つです。
そして何より定着の鍵となるのは、日本人スタッフも含めた「お互いさま」の精神と、多少のミスも成長の契機と捉え、日々の小さな成功体験の積み重ねを実感することです。それは外国人材だけでなく、すべての従業員にとって働きやすい職場につながります。
自社が外国人材からだけでなく、日本人から見ても働きやすいかという視点を持ち、客観的視点で検討することをおすすめします。
