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コロナと高齢化。人間の健康に害の無い「清掃資材」を見直しています。

2022/01/06 15:00

2021.12.20 12:00 更新

―― リライアンス社は山本千雅子社長で3代目になるのですか?

山本 主人の父がビルメンの草創期に創業しまして、次いで主人、さらに昨年の1月に主人から私が引き続いで社長になりましたので、3代目ということになります。

――ご創業者の山本茂夫氏は1971年に北海道ビルメンテナンス協会の会長に就任されて、その翌年には第11回冬季オリンピック札幌大会が開催され、会場施設メンテナンスに参加されたようですね。

山本 はい、その通りです。

―― コロナ禍にバトンタッチされた企業の舵取り。これはなかなか大変なことだと思います。

山本 実は、私は翻訳・通訳会社を経営しているのですが、2020年1月頃からは、コロナ禍の影響で翻訳業が開店休業状態になってしまいました。そんな時期に主人が体調を崩してしまったため、私にビルメン企業の舵取り役が回って来まして、あれこれ言う間もなく就任した次第です。

コロナ禍は、スタッフの健康を守り、
高齢者でも安心安全に使える
資材の見直しをする契機になりました。

北海道札幌市の真ん中を流れる創成川のそばに拠点を持つリライアンス株式会社。近くにはさっぽろテレビ塔や大通公園もあり、都市と自然の景観がほど良く整備されたエリアでビルメンテナンス業を営んでいる。同社の代表取締役社長である山本千雅子氏が、ご主人から経営を引き継いで約2年が経つ。

主婦業と会社経営を行いながら、北海道大学大学院にも通って土木工学博士号を取得した山本氏は、実にパワフルな経営者だ。2020年1月からはビルメン企業経営の仕事も加わり、コロナ禍での業務改善やスタッフの高齢化など課題も多いが、冷静に状況を分析し、為すべきことの改善に着実に取り組んでいる。

―― コロナ禍でのビルメン事業、新社長としてはどのような方針で取り組んでらっしゃるのでしょうか?

山本 資材の見直しを始めています。

―― 現場で使用されている資材の多くは、これまで清掃の世界でスタンダードに使われていたものが多いと思うのですが、新社長のフレッシュな目でご覧になると何か気づいた点があったのですか?

山本 コロナになって清掃に除菌作業が加わることになり、使用する資材の種類も増えました。そこで洗剤などもなるべく使用者に負担がかからず、空間を利用するお客さまにも負担のかからない、害の無いものを使っていこうと思い、見直しを始めています。
さまざまな洗剤があり、その成分などを詳しく調べてみると、人間の健康にあまり良くない成分が含まれていることもありますが、そこに気づかず当たり前に使用していることも多いのです。この点から積極的に改善していこうと考え、取り組み中です。

―― 確かにコロナ禍になって以降、「健康」が社会の最大関心事になったと言っても良いでしょうね。

山本 新型コロナウイルス感染症が拡がり始めたときに、現場作業に携わる清掃従事者の方たちはとても怖がりました。そして、やがて感染経路の清掃除菌の仕方も学習し、対処の仕方が理解できるようになっていきましたが、私がその過程で考えたことは、「どのようにしたら清掃従事者の方たちに安心安全に働いてもらえるのか?」ということです。コロナという新しい日常の中で、清掃発注者側からは除菌資材として「次亜塩素酸ナトリウム」が支給されることもありますが、その成分特徴などをよく理解しないまま霧吹きで空中噴霧して使用しているとか、モップを洗う際にお湯に溶かして使っているといった、ビックリするような話も聞こえてきたことがあります。

―― なるほど。

山本 「次亜塩素酸ナトリウム」は非常に強力な消毒液ですから、それを希釈して薄めて使用しなければなりませんし、資材の誤った使い方が原因になって、使用者が健康被害を引き起こしては本末転倒です。
新しい働き手が参加する現場も多い業界ですから、そのようなことが起きないように、まずは「健康第一」を念頭に置いて資材を選び直し、正しい使い方をしっかり学習することが大切です。健康への意識づけという意味では、コロナが蔓延し始めた初期に、成分内容を調べて納得できたアルコール製品を会社で購入し、従業員の皆さんに配布して自宅で使用していただき、自分たち一人一人がコロナに感染しないように対策する活動も行いました。そういったことを経験しながら、現在会社ではアルカリイオン水の自社生成なども行って、それが定着してきたところです。

1.リライアンス本社ロビーから見た光景。同社の理念は「まちを創る会社」。心豊かに、自由でおおらかに生きる事の出来る「まちづくり」を、事業として展開すると記されている。

2.社内のガラスパーテーションに特殊な成分のクレヨンで描いたアニメキャラクター。描かれたクレヨンが何日くらいで清掃除去可能なのかを実験中。

3.リライアンス社は主に自治体庁舎、第三セクター施設、病院などの清掃を受託しているほか、警備や設計・施工、整備計画やライフサイクルコスト(LCC)コンサルティングやファシリティマネジメントなども手掛ける。

4.山本社長のもう一つの顔である翻訳・通訳会社経営。同社の業務作品である日本の観光ガイドブックや科学技術白書英訳版も会社ロビーで閲覧できる。

―― 清掃現場は高齢者の方も多いですし、従事者の健康管理は重要なテーマだと思います。

山本 弊社も清掃現場には高齢従事者の方がたくさんいます。高齢化は健康と同時に、身体力低下をカバーする労働環境づくりも欠かせません。
たとえば「モップを絞る」といった作業ですが、歳とともに「絞る力が弱くなっていく」という現実があります。
となるとモップではなく、絞らなくても良い道具ですとか、高齢化に見合った道具の導入活用も考えなければなりません。

―― コロナがきっかけになった健康・安心・安全という視点での資材や道具の見直しですが、お話を聞いていると、詰まるところ「働き方の見直し」ということにも繋がっていくのではないですか?

山本 「有給休暇の消化」という社会的な問題がありますよね。なかなか取得できないという声も聞こえていますが、弊社では100%有給休暇を取ってもらっています。そうすると国の指導通りに有給休暇を実行している会社としていない会社では、当然ながら人件費に差が生じます。すると自治体などの入札価格にも跳ね返ってくるわけです。
ですので私は、障がい者雇用や高齢者雇用などの要件と同じように、従業員の有給休暇消化率も入札用件に組み込むべきだと思います。たとえば有給休暇8割ですとか、そういった基準を作ることで、ビルメンテナンスで働く人にとっても今より優しい職場環境づくりが実現できていくのではないでしょうか。
SDGsという時代の流れと照らし合わせても、これは必要なことだと思っています。