mv mv-sp

SDGs課題をお客様と共有しながら、社会全体のサスティナビリティを 動かし続ける社会装置として、ビルメンを機能させることが大切。

2021/09/27 13:33

12:00 更新

―― 綜合建物サービスさんは「サスティナビリティ宣言」を会社で掲げられています。これはビルメンテナンス企業として、どんな思いを持った宣言なのですか?

大野 ビルメンテナンスという世界は、とても幅広い仕事に対応しています。たとえばペンキ屋さんならペンキを扱い、配管屋さんは配管を扱っていますが、総合ビルメンテナンスは、ビルの維持管理に関わる業務は何でも広く浅く扱うことになります。
と共に現在は、都市社会に欠かせないビルなどの建物を運営する数多くの企業にとって、今後の企業活動を継続していくための重要な課題「SDGs」に対して、本気で対策しなければならない時代になりました。
つまりビルの維持管理者である我々ビルメンテナンス事業者も、お客様とベクトルを合わせ、これからの時代の価値観を幅広く共有していくために、「SDGs」の中心的な問題である環境保護、脱炭素、貧困などを意識し、これらの問題をお客様と一緒に解決しながら、循環する経済活動、社会貢献を行っていかなければならないということです。
こういった思いを「サスティナビリティ宣言」としてまとめ、これを具現化するために明確なゴール設定を行いました。

綜合建物サービスの本社入口を入ると、ロビーには「和を大切に 心ひろく 共生をめざす」と記された、同社の経営理念の図が掲げられている。この言葉には「環境に配慮した経営を推し進め、自然環境を維持するための努力を怠らず、お客様、社員・事業パートナー、地域社会それぞれの個性を生かしながら、利害を超えて共に繁栄をしていきたい」という思いが込められている。

都市と建物のライフサイクルを延ばすために、
ビルメンが果たす役割は極めて大きい。

1981(昭和56)年からビルメンテナンス事業をスタートした、茨城県の綜合建物サービス株式会社。事業の成長とともに、医療関連サービスマーク、環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001認証なども取得し、2011(平成23)年には茨城経営品質賞 奨励賞を受賞した。代表取締役社長の大野洋平氏は、常に時代の変化を読み、お客様と価値観を合わせながら仕事に取り組みたいと語る。

―― それはどのような内容ですか?

大野 1つ目が「ジョブトレーニングで豊かな未来を創ろう」というものです。具体的には、外国人技能実習生の方などに日本とカンボジア現地法人での就労によって日本型のメンテナンス技術を取得してもらい、この方たちの母国である東南アジアなどでの経済的自立と起業を循環型支援します。
2つ目は、「エコテックで脱炭素社会をつくろう」。これは、再生エネルギー保守管理と木材再生事業によって、脱炭素社会を実現しようという内容です。
そして3つ目が「エコマテリアルで自然環境を守ろう」というもので、水環境汚染防止提案と大気汚染防止提案を行い、積極的にお客様や地域社会に発信していきます。

―― 時代のニーズをしっかり捉えていますね。

大野 ありがとうございます。ビジネスとしての面を補足しますと、再生エネルギー保守管理の領域では、「太陽光パネルの洗浄」と「太陽光発電所のO&M保守管理」をご提供しています。

―― O&Mというのはどんな意味ですか?

大野 太陽光発電システムの「Operation(運用)」と「Maintenance(保守)」です。新しいエネルギー供給設備の維持管理においても、ビルメンテナンスでサポートできることはいくつもあります。
また木材再生技術として「エアー鉋(かんな)による木造物再生」「サンダーを使ったフローリング再生」をご提供し、環境汚染防止提案として「アルカリイオン電解水による洗浄」「ナノメンテというガラスコーティング加工による外壁・床材コーティング」などのラインナップも用意しています。

―― 新しい技術の導入が多いですね。

大野 これからのサスティナブルな時代に対応した技術は次々に生まれています。それらをいち早くキャッチするためにアンテナを高くしています。

―― ちなみに「エアー鉋」というのは、どんなものですか?

大野 「エアー鉋」は、木材の長寿命化と美観の再生を目的に開発された新しい乾式工法で、老朽化した木造建築物を再生する技術です。
ノズルから空気と植物性粉体を混合したものを木材などに噴射して、汚れや腐朽菌、劣化層を除去します。とても高性能な技術で、繊細な作業を求められる彫刻や重要文化財などにも採用されています。

―― 木造の重要文化財となると、伝統的な宮大工の世界ですね。

大野 そういった伝統工法の世界でも活用され始めている、木材のための新しいメンテナンス技術です。ビルメンでも寺社仏閣の清掃を請け負っている会社は多いと思いますが、老朽化した木造建築物を清掃し、再生するための手法として私は注目しています。
現在弊社では実証実験を行っており、来年から本格事業化させたいと思っています。

―― 大野社長が考えるこれからのビルメンテナンスというのは、そのような新しい技術と共にある仕事ということなのでしょうか?

大野 清掃における「美装」を重点的に行ってきた、これまでのビルメンテナンスの在り方を決して否定しませんが、時代のニーズを解決する新しい技術も採り入れながら、ひと味もふた味もビルメンの新しい魅力を増やし、ビルメンの能力を多様化していきたいのです。
私はアメリカで大学時代を過ごしたのですが、学校ではデザインを専攻していました。もともと建築というデザインが大好きなのです。卒業後はアメリカで就職し、その後帰国して家業であるビルメンテナンス業を継ぎました。
実は子どもの頃は、小学4年生くらいで大人たちに交じって定期清掃の現場に出始め、カッパギをはじめいろいろなことを覚え始めました。そして中学、高校時代には、夏休みや年末年始に家業の手伝いに精を出しました。
清掃やビルメンテナンス業に対して思いは深いですし、建物全体をサポートするビルメンという職業は、社会にとって無くてはならない仕事だと思っています。

1.老朽化した木材に「エアー鉋」を施した、施工前後の木材の違いを大野氏はスマホで見せてくれた。左が劣化した状態の木材。右がその木材表面を「エアー鉋」によって粗して下地処理を行った状態。こうすることで、水性塗料などの塗装時に付着強度を高めることができる。「この違いは一目瞭然ですよね」と大野氏。

2.綜合建物サービスでは、IoTを活用したビル管理にも積極的に取組んでいる。その基本システムの構成画面を特別に見せていただいた。ビルやホテルなどを対象に、それぞれの建物内の設備機器や警報などをIoT統合し管理するものだ。ダッシュボード表示と端末管理機能によって、スマホやタブレットが照明や空調のスイッチの代わりになる。

3.「綜合建物サービスは、全ての社員・事業パートナーと共に、このクレドを周知・実行することで、皆様に快適な環境を提供します」と記された、同社のクレド(信条・信念)。「ハイッ、よろこんで!!」という快活な返事が、はつらつとした大野社長の明るい雰囲気と重なる。

4.大野氏はアメリカの大学を卒業後、貧困問題を勉強し、それをテーマにMBA取得を考えていた。しかしただ学ぶだけでなく実際に貧困問題に接し、その解決を通じて人に幸せになってもらう最終目標を実現するためには、家業であるビルメンテナンスの仕事を通じて取り組んだ方が役に立つと思い至った。そこで帰国し、ビルメンテナンス業に就いた。その結果の一つでもある、2011(平成23)年に同社が受賞した「茨城経営品質賞 奨励賞」の賞状。

大野 変動する時代に合わせて新しい技術を採り入れ、SDGs、サスティナビリティに対策していくことには、同時に「会社の皆で成長していくためのきっかけ作り」という側面もあります。
弊社ではカンボジア、スリランカ、ミャンマーの仲間たちとも一緒に働いています。そんな彼らと弊社スタッフはなぜ一緒に働いているのだろうか。それは会社のためでもあり、個人それぞれの生活のためでもありますが、弊社では外国人スタッフをただの作業人区ではなく、彼らの社会的自立とスキルアップを目標として、現場作業以外の本社業務にも徐々に携わってもらっています。そうすることで、弊社グループ全体の有益なチーム作りが進められると判断したからです。

―― 会社という混成チームを活性化させるためには、時に思い切った取り組みも必要だということでしょうか?

大野 そうだと思っています。そして今日お話したビルメンテナンス事業においても、会社の魅力を上げていくためには、弊社のような中小企業は大手資本のようなスタイルを追随しないことも大切です。
太陽光などに代表される、これからの社会を営む上で欠かせない再生エネルギー。その保守管理はビルメンテナンスの新たな領域ですが、弊社では太陽光パネルの「洗い」から始め、次いで設備管理に進みました。太陽光発電のメッカである茨城県、千葉県の中間地点である取手で行っており、現在、全体売上の10%にまで伸びてきて、このコロナ禍でさらに成長しています。今後も設備管理事業で売り上げのパイを変えていけるよう考えて行きます。
社会全体のサスティナビリティを動かし続ける、社会装置としてビルメンを機能させる。都市と建物の維持管理に貢献し、ライフサイクルを延ばすために、ビルメンテナンスが果たす役割は極めて大きいと思います。
そのためにも自社の「品質・信頼・技術」を高め続け、自主・自立の社風を追求していきます。