

働き方改革と次世代育成を両立する企業へ
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第一商事株式会社
代表取締役社長 柴田 千春 氏

―――第一商事株式会社について教えてください。
柴田 当社は1961年、岩手県初のビルメンテナンス事業者として創業しました。
1989年には、女性の視点に立って家事や介護の助けになるサービスを提供するために、ハウスクリーニングと介護用品販売を目的とした株式会社レディーズ・アイ(現:レディーズ・アイ事業部)を創設しました。2009年には、介護施設と託児所を一体化した「やちだもの家」を開設し、介護施設や老保一体型の保育施設の運営も行っています。
ビルメンテナンス事業と介護福祉事業は、いずれも人々の健康かつ安全な暮らしを支える仕事です。お客さまに質の高いサービスを提供するためには、従業員の方々が喜びとやりがいをもって働ける会社になることが重要と考え、現在は働きやすい職場環境づくり、子育てや介護の両立支援、資格取得支援や教育制度の整備に取り組んでいます。


―――入社の経緯を教えてください。
柴田 2009年に介護施設「やちだもの家」を立ち上げることになったのをきっかけに、当社へ入社しました。
入社前は専業主婦だったため、最初の1年間は介護の基礎から学びました。その後、本社勤務となり、ビルメンテナンス業務についても知識を深めていきました。
「建物をきれいにしてお客さまに喜んでいただきたい」「当社で働く方々にも喜んでいただきたい」という思いを、祖父から父へ、そして父から私が引き継ぎました。この思いを受け継ぎ、次の世代へ伝えていくことが、私の使命だと考えています。
本社に配属されてからは、働き方の見直しや採用活動、研修制度の充実に力を注いでいます。

かつて第一商事の裏には、樹齢160~180年の大きなやちだもの木があり、「柴田家のやちだも」としてお客さまや近所の人たちに親しまれてきました。 倒木の恐れから、1996年に伐採されましたが、介護施設や保育施設、社内報に「やちだも」の名がつけられている第一商事のシンボルツリーでした。 |
―――働き方の見直しを取り組まなければと感じたきっけかけはありますか?
柴田 当時、当社では女性の方が多かったことから、創立30周年記念事業の一環として、従業員向けの託児所「やちだも園」を開設しました。私自身も子どもたちを「やちだも園」に預けて働きはじめました。介護施設の立ち上げ業務は多忙で休日も少なかったので、子どもたちに寂しい思いをさせているのではと感じることがありました。そして、それは私だけでなく、現場で働く従業員の方たちも同じ気持ちなのではないかと思うようになりました。
そこで、「人手が足りないから残業が多くて当たり前」といった職場の雰囲気を変えようと考え、従業員の方全員――約800名分の残業時間を各部門、各現場毎の一覧にまとめ、残業時間の偏りなどを毎月1回話し合うようにしました。その中で、スケジュールの組み方や業務の見直し、属人化を防ぐための取り組みを進めてきました。
また、従業員の方の残業時間の管理だけでなく、現場ごとの収支も把握できるようなシステムを導入し、各現場の経営状況を見える化する取り組みも行っています。
こうした取り組みは大変な部分もありますが、現場で日々頑張ってくださっている方たちがいてこそ、会社は成り立っていて、だからこそ、その方たちがしっかり休めて、さらに給与面でも報われるような環境を整えていきたいと考え、力を入れて取り組んでいます。
―――採用にも力を入れているとお伺いしました。
柴田 会社を将来にわたって継続・発展させていくためには、若い世代の採用が欠かせません。そのため、当社では高卒新卒や新卒の方々の採用に力を入れています。
私が採用に携わり始めた頃、就職説明会に参加した際に、当社やビルメンテナンス業界そのものがあまり知られていないことに気づきました。そこで、若い世代に当社を選んでもらうには、まずは「知ってもらうこと」が必要だと考え、広報活動を始めました。
2019年から採用を意識したホームページを作成し、SNSも開設しました。Instagramでは当社で働く従業員の皆さんや社内イベントなどの様子を発信しています。また、今年4月には再びホームページをリニューアルし、お客さまだけでなく、就職を検討している方々にも当社の業務内容、雰囲気が伝わる内容を目指しました。
実は当社は以前から女性の方が多く、現場や管理職としても活躍している会社です。しかし、これまでそのことを外部に積極的に発信してこなかったため、あまり知られていませんでした。そこで、若い世代にも当社の取り組みを知ってもらうために、「えるぼし認定」や「くるみん認定」や「いわて女性活躍認定企業等(ステップ2)」を取得しました。
こうした取り組みの甲斐もあり、現在では20代・30代の方にも選ばれる会社になってきていると感じます。

「いわて女性活躍認定企業等(ステップ2)」は、岩手県が女性の活躍推進に積極的に取り組む企業などを認定する制度です。また、「くるみん」は、子育て中の従業員を支援する取り組みを行っている企業が取得できる、厚生労働省の認定制度です。一方、「えるぼし」は、女性の活躍を積極的に推進している企業が取得できる認定制度です。これらの認定を受けた企業は、女性や子育て世代に配慮した取り組みを行っている企業として、県や国から高く評価されていることの証といえます。 |
―――研修や資格取得などの教育制度について教えてください。
柴田 社内研修については、以前は技術研修のようなものしかありませんでしたが、当社でやりがいを持って働いていただくために、現在は入社間もない従業員の方々を対象とした「理念研修」にも力をいれています。
研修では、会社の歴史や理念をお伝えし、最後にはグループワークも行います。テーマは「10年後の会社はどうなっているか」「そのために自分ができることは何か」などで、意見交換をしてもらいます。
参加者は部署や現場、年齢もさまざまで、多様な視点やアイデアが生まれ、私自身も毎回多くの学びを得ています。
また、従業員の方の資格取得支援にも力を入れています。助成金の活用も行っていますが、挑戦する方の負担にならないよう、受験・受講料だけでなく交通費や宿泊費も会社で負担しています。
資格試験・講習会によっては複数日にわたる出席が必要なものもあるため、毎年、企画部がその年に受験を検討している従業員の方を把握し、スケジュールを立てています。
資格取得は、個人のスキルアップ・キャリアアップに繋がり、結果的に会社の成長にも寄与すると考えていますので、今後も積極的に支援を続けていきたいと考えています。
―――Instagramを拝見しましたが、「大お花見会」など、部署や現場を超えた交流の機会があるのですね。
柴田 はい。「大お花見会」は、日頃現場で働いている従業員の皆さんの労をねぎらい、永年勤続の節目をお祝いする場として、先代が1979年に始めた伝統ある行事です。
近年はコロナ禍の影響で開催が難しい状況でしたが、今年は6年ぶりに実施することができ、約200名の方にご参加いただきました。
当社には一人現場で勤務してくださっている方も多くいますので、久しぶりの開催を皆さんとても喜んでくださいました。
当社では技能実習生の方々が2019年から働いてくれているのですが、「大お花見大会」の際に、参加者に紹介することができました。
部署や現場を超えて多くの方が集まる機会ですので、最近入社した方にとっても、働く方同士のつながりを深めるきっかけになればと考えています。

―――柴田社長からみて第一商事で働く従業員の強みを教えてください。
柴田 一言でいうと、皆さん「真面目」な方ばかりです。どなたもがそうだと思いますが、仕事だけでなく、さまざまなご事情を抱えながらも、明るく前向きに、一生懸命働いてくださっていて、本当に尊敬しています。
また、第一商事には幅広い世代の従業員の方がいらっしゃるのですが、それがすごくいいところだなと感じています。例えば、若い世代が入社した時には、周りのみんなでその子をサポートして、成長していく姿を一緒に喜びます。そしてその子が少しずつ力をつけて、今度は新しく入ってきた方を教える立場になる。そうやって自然とバトンが受け継がれていくような文化があります。
他にも、産休や育休を取ったときには、周りの方がフォローしてくれます。その経験があるからこそ、「次は私が誰かを支える番だな」と自然に思えるようになります。そういう思いやりのある空気が、会社全体に根付いていると思います。
当社の従業員の皆さんは、多種多様な職業の中からビルメンテナンスという仕事を選び、さらに岩手県内に数多くあるビルメンテナンス企業の中から当社を選んでくれた方々です。そのことに感謝の気持ちを忘れず、当社で働くことで安心して健全な生活を送れるように、そして従業員の皆さんに喜んでもらえる会社でありたいと常に考えています。

Corporate Information
- 第一商事株式会社
- 〒020-0887 岩手県盛岡市上ノ橋町8−8
- TEL: 019-651-3241
- 代表取締役 柴田 千春 HP: https://dai-ichi.com/ Instagram: https://www.instagram.com/daiichishoji/