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CASE59 災害の原因を安易に“不注意”と決めつけない―管理の問題か人の問題かをしっかりと見定めよう―

2022/11/04 15:00

2022/11/4 15:00 更新

A子さん(64歳、女性)は、ゴミステーションに出された不燃物と書かれた段ボール箱の中身が気になり、確認しようと思って開けた。中にはペットボトルやスプレー缶、金属製の箱などがぎっしり詰まっていた。
スプレー缶などは分別しないといけないと思い、手を入れ取り出そうとしたところ、透明の割れたコップのフチで、指を深く切ってしまった。

ゴミの分別廃棄はかなり浸透してきましたが、自治体の回収ルールも地域によっては異なっていて、テナントビルや集合住宅では守られていないケースも見かけます。事例のように何でも詰め込み、内容物の標示もいいかげんな場合が多いです。
A子さんのような真面目なクリーンクルーなら、“不燃物”の中身は何か、確認して分別できるものは分別しないと、と思うのも当然です。真面目さ、熱心さが事故につながってしまう、実に残念なことです。

この事故の再発防止対策として、現場のリーダーは「事故の原因は作業者の不注意によるもので、今後このようなことのないよう、ゴミの分別作業には十分注意するように指示します」と報告書に記載しました。

果たして事故の原因は“不注意”だけだったのでしょうか? 事故の経過を見ながら、どんな失敗があったかを考えてみましょう。

➀ 不燃物の段ボールを発見した。 
 〇 ゴミステーションの中の状況をしっかりと見ています。
② 段ボール箱を開梱した。
 ▲ 何を使って開梱したのでしょうか。カッター? ハサミ? 素手? 使用する道具は決められていいたのでしょうか。少し問題ありです。
③ 分別の必要な物を発見
 〇 分別の知識はしっかりと持っていました。
➃ 手で取り出そうとした
 ✖ 内容物がよく分からない場合、素手での作業は危険です。トングや切創防止の手袋(革、厚手の軍手など、ゴム手袋は切創防止には適しません)を使用しましょう。
結果:割れたコップで指を切ってしまった

どこにA子さんの不注意があったのでしょうか。

「注意していなかった」のではなく、A子さんの注意は箱の中のペットボトルやスプレー缶、取り出さなければいけないものはないかと、そこに注意、視線は向けられていたのではないでしょうか。注意力というものはひとつのモノ・コトに集中すると周囲が見えなくなってしまうという、これは人間の特性、すなわちヒューマンエラーなのです。

事故防止策として「注意して行う」という言葉をよく目にしますが、これだけだと具体性に乏しく、注意された側には「私だって十分注意していました」という気持ちがあるだけに、うまく伝わりません。事故の要因、原因と再発防止策をもう少し深掘りする必要があります。

この事故の場合は、作業手順、作業方法に誤りがあったと考える方が妥当でしょう。段ボール開梱には、開梱用のカッター(刃先が隠れていて切創の危険がない)を使うこと、ゴミ箱や内容物が不明の場合は素手で取り出そうとせず、トングを使うこと、というルールをしっかりと決めて、それを守る習慣を身につけるという“管理”の側の問題と考えましょう。

安易に作業者に問題を転嫁するのではなく、作業手順・方法の設定と遵守教育、保護具の使用など安全管理の面から再発防止対策を見直してみましょう。

公益社団法人
全国ビルメンテナンス協会広報委員会 委員
阿部研二さん

1977年中央労働災害防止協会に入社。健康快適推進部長、出版事業部長を経て、2019年5月まで常務理事。