ビルメンWEB特集pc_1024 ビルメンWEB特集sp_1024

エコチューニング技術者資格認定制度で次世代の技術者へ! ~前編~

2022/06/09 13:00

2022/06/09 13:00 更新

「カーボンニュートラル」や「SDGs」など、あらゆる業界で環境配慮の動きが活発になるなか、ビルメンの世界も例外ではありません。そこで注目したいのが、運用から建物の“エコノミー&エコロジー”を支える、「エコチューニング技術者資格認定制度」です。同技術者は、環境省の「エコチューニング」 事業に基づく資格者で、ビルのエネルギーを
扱うプロフェッショナルとして認定されるものです。ここではその概要を紹介するとともに、同技術者の育成と認定を行う「エコチューニング技術者資格認定部会」委員長である柳井崇さんに、エコチューニング技術者が実現する未来や、資格取得のメリットについて聞いてみました。


そもそも「エコチューニング」とは?

地球温暖化をはじめとする気候変動の主な原因となっているのが、二酸化炭素をはじめする「温室効果ガス」と呼ばれるものです。日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言し、あらゆる産業や分野での取り組みを推進しています。こうした動きのなかで、ビル等の建築物からの温室効果ガスの排出量を抑えるべく、環境省がスタートさせた事業が「エコチューニング」です。

ビル等の建築物では、照明、空調、給排水など日々多くのエネルギーを消費して生産活動を行っています。エコチューニングは、省エネ設備への入れ替えなどの投資を行わずに、いま設置されている設備の運用を見直し、生産性や快適性を確保しつつ、ムダなエネルギー消費を抑えることで脱炭素に貢献するものです。

2016年には、閣議決定された「地球温暖化対策計画」に「エコチューニング」の推進が盛り込まれるなど国として推進する重要な事業のひとつとなっています。
そんな「エコチューニング」を実践できる技術を持つことを証明する資格認定制度として、2016年から「エコチューニング技術者資格認定制度」はスタートしました。

 
ではここから、エコチューニング技術者資格認定部会委員長である柳井崇さんに、まずは「エコチューニング技術者資格認定制度」を取り巻く現状や、その価値についてお聞きしていきます。

脱炭素を実現するための運用改善の重要性

――エコチューニング技術者資格がスタートした2016年から6年程が経過しました。令和3年度時点で全技術者数は第一種591名、第二種889名まで増えていますが、この間のエコチューニングを取り巻く環境の変化をどうとらえていますでしょうか。

2016年を振り返ると、当時は環境配慮への意識はまだまだ高くはない状況でした。「エコチューニング技術者資格認定制度」は時代に先駆けて、設備機器・システムの適切な運用改善により温室効果ガスの排出削減等を叶える技術者を増やすべく誕生した制度です。
その後、低炭素から脱炭素へといった国が掲げる目標の強化や、SDGsといった世界的な環境意識の高まりを受け、環境に対する取り組みは急速に社会へと浸透しました。建設業界においても、これまでは新築を対象として「いかに環境に優しい建物をつくるか」が考えられてきましたが、今後は運用段階にある既存の建物でのアプローチの大切さがより注目されるでしょう。

第一種/第二種エコチューニング技術者の役割

【第一種エコチューニング技術者】
建物におけるエネルギーの消費実態や特性を把握した上で、設備機器・システムを効率良く運転するためのエコチューニング計画等を策定し、さらに「①計画→②実践→③効果検証→④改善」のP-D-C-Aサイクルを実践並びに指導することによって、消費されるエネルギーを削減する技術者。
【第二種エコチューニング技術者】>br>
建物におけるエコチューニング計画等に基づき、その建築物の特性を踏まえて、設備機器・システムの運転管理設定や調整を実行する技術者。

――なぜ運用段階でのアプローチが注目されているのでしょうか。

現存する建物には、当然、新しいものも古いものもあります。最新の建物は脱炭素や省エネを考慮した設計がなされていますが、一方で古い建物は、新築に比べて、棟数・
延べ床面積も膨大であり、設計や設備上の問題としてエネルギー効率の悪いものも存在しています。ではそういった建物を建て替えればいいのか、改修すればいいのかと言えば、そうではありません。建て替えや改修には大きなコスト、更には、多くの資源やエネルギーが必要であり、ビルオーナーや自治体もそう簡単にできる決断ではないからです。
 そこで既存の建物において、設備機器・システムの運用改善によって脱炭素を実現する、という方法が大切になってきます。大きなコストをかけずに、運用面を見直すことで脱炭素に近づくことができるならば、多くの建物で取り組むことが可能ですし、多くの建物が「エコチューニング」に取り組みはじめれば、一つ一つの効果は小さくてもその効果の積み上げは非常に大きなものとなるでしょう。この点で、「エコチューニング」は皆が取組むことで、現実的でかつ効果を見込める方法だと言えます。


2016年からスタートした「エコチューニング技術者資格認定制度」。
脱炭素がビジネスの重要なキーワードとなる時代に、その注目度は今後ますます高まっていきそうです。インタビュー後編では、資格取得で得られる力や将来的なメリットについて、さらに具体的にお聞きしていきます。

エコチューニング技術者資格認定部会委員長
柳井 崇 氏

オフィス関連の環境・設備設計監理・省エネ関連のコンサルティング業務に従事。建築物の省エネの研究・普及活動に取り組み、環境関連の賞を数多く受賞。エコチューニング技術者資格認定部会委員長のほか、経済産業省ZEBロードマップフォローアップ委員会委員、建築設備技術協会の副会長などを務める。

エコチューニング技術者資格の詳細についてはこちら