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CASE57 視力機能低下に配慮した職場環境の改善を! 作業者は自分の身体を良く知ろう

2022/08/31 14:00

2022/8/31 15:00 更新

    クリーンクルーのA子さん(68歳)。集めたゴミを地下のステーションに持ち込もうとドアを開けたところ照明がついていなかった。慣れた場所だからとそのまま進んだところ、足元にはみ出していた段ボールに躓き、転んでしまった。

事例のような事故は毎年多くの現場で発生しています。転倒に至った直接の原因は、ゴミステーション内の整理整頓ができていなく足元の段ボールに躓いたことですが、部屋の暗さも一因です。特に、明るいところから暗い場所に入った場合、人間の目はその暗さに慣れるまで少し時間がかかります。人によって多少の差はありますが、年齢が高くなるにつれその機能が少しずつ低下していきます。

加齢による機能の低下は、下図のように視力、聴力、記憶力、学習能力、運動調整力が特に顕著になっています。なかでも視力は安全作業に大きな影響がありますから、自分の視力、視覚機能の低下についてしっかりと認識する必要があります。

健康安全1

意識したい視野角の変化・おとろえ 

左右の見える範囲のことを視野角といいますが、60歳を過ぎるとだんだん狭くなってきます。下図を参考に正面を向いて両手を広げ、どの位見えているかチェックしてみましょう。
思ったよりも狭くなっていても大きな問題ではありません。左右に首をしっかりとふれば狭くなった視野角をカバーできます。しかし、この動作を億劫がってしまうと、人やドアにぶつかる事故の元になります。

健康安全2

出典:一般社団法人全日本指定自動車教習所協会連合会

動体視力は60歳を過ぎると低下します 

動体視力はモノの動きについていく視力で、横方向の動きを識別する能力と奥から目の前に近づいてくるものを判断する能力の2種類があります。人の動きや近づいてくる自転車、車などへの反応が遅くなると、激突・激突されるといった事故の原因にもなります。この動体視力も60歳を過ぎると急激に低下します。WEBサイト等で動体視力検査ゲームやトレーニング方法が無料で公開されていますので、一度セルフチェックをしてみてはいかがでしょうか。

健康安全3

出典:鈴村昭弘「空間における動体視知覚の動揺と視覚適正の開発」日眼会誌

高齢者が働きやすい、明暗順応を意識した職場づくりを 

夜間に対向車のヘッドライトが目に入り、まぶしくてしばらくモノが見えにくかったり、昼間でもトンネルから抜けた時に明るさに慣れるのに時間がかかったりする経験はあると思います。このような現象は「明暗順応」と呼ばれますが、加齢により瞳孔の開閉力が衰えると、さらに夜間の視力が低下します。今回の事例のような転倒事故をはじめ、夜間の車、自転車の運転事故の原因にもなります。「明暗順応」は少しの時間で回復しますから、事故防止対策として、その間は作業を止めたりスピードを緩めたりしましょう。
屋内作業では明るい空間から暗い空間に移動する時は、必ず照明を点けてから移動しましょう。また、日照時間は季節ごとに変化します。暗さへの順応は個人差がありますから、照明の点灯開始・消灯時間は個々の作業者の意見を聞き、細かく見直しするなど、高齢者に働きやすい環境を整えましょう。
また、夜間の視力低下は加齢だけでなく、白内障や緑内障、網膜色素変性症、糖尿病網膜症などの病気が原因で起こることもありますから、60歳を過ぎたら一度眼科で検診すると良いでしょう。

高齢ドライバー検査の応用 

今回紹介した視野角、動体視力、明暗反応(夜間視力)に関する検査は、70歳以上の高齢ドライバーには、免許更新時に測定が義務付けられています。
しかし、こうした視力機能の変化は、車の運転時に限らず、私たちの日常の作業にも大きな影響があります。まずは視覚機能が低下していることに気づく、自覚することが重要です。事故を未然に防ぐためにも、定期的に自分自身で測定してみることをおすすめします。

公益社団法人
全国ビルメンテナンス協会広報委員会 委員
阿部研二さん

1977年中央労働災害防止協会に入社。健康快適推進部長、出版事業部長を経て、2019年5月まで常務理事。