現場に寄り添い、建物を守る~ビルメンテナンスを軸に描く未来~
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八洲管理株式会社
代表取締役社長 佐藤 秀雄 氏

―――どのようなお子さんでしたか?
佐藤 子どものころは、前に立つタイプではありませんでした。目立つ存在よりも、どちらかというと後ろにいる方が居心地がよく、主役を支える立場に自然と惹かれていました。
小学生の頃は地域のソフトボールチームに所属していましたが、ポジションで真っ先にやりたいと思ったのがキャッチャーでした。試合全体を見渡しながら、影でチームを支える役割に魅力を感じていたんだと思います。
また、アニメで言えば「ゲゲゲの鬼太郎」の『塗壁(ぬりかべ)』が好きだったりと、派手な主役よりも、場を守るような地味だけど欠かせない存在に憧れていました。
先頭に立って引っ張るというよりは、キャプテンを支える役回りの方が性に合っていましたね。
―――子どもの頃から家業を継ぐことを考えていましたか?
佐藤 子どものころ、父はまだ八洲管理ではなく別の会社に勤めていましたので、私自身も八洲管理を継ぐというイメージはまったくありませんでした。
八洲管理は祖父が1968年に創業し、祖父が他界した1981年からは祖母が経営を引き継ぎました。当時は女性経営者がまだ珍しい時代であり、さらに社会人経験もほとんどない中での経営でしたので、相当な苦労があったと聞いております。
それでも、業界の皆様に支えていただきながら事業を継続し、安定した経営基盤を築いてくれたことが、今日の八洲管理の礎になっていると感じています。
子どものころの私にとって八洲管理はあくまで「祖母の会社」という存在であり、自分が将来そこで働くという意識はありませんでした。
大学では教員を目指し、4年生のときには教育実習で実際に教壇にも立ちました。その経験を通して感じたのは、教師という仕事には、より多様な人生経験や社会経験が求められるということでした。
その結果、すぐに教員の道へ進むのではなく、まずは一般企業で社会人としての経験を積むことを選びました。
―――大学卒業後はどういった仕事をされたんですか?
佐藤 新卒で入社した会社はコールセンター業界の企業で、営業職として広島市にある支店に勤務していました。
主に民間企業を対象としたBtoB営業を担当し、広島に本社を構える大手企業のコールセンターの多くを、ほぼ一手に任せていただいていました。営業として新規開拓から既存顧客対応まで幅広く携わり、提案型の営業を実践していました。
コールセンター業界は、「人を雇用し、アウトソースで運営する」という点でビルメンテナンスと構造がよく似ています。そのため、当時から“現場を支えるアウトソーサー”という発想を自然と身につけていました。
また、通話時間や入電予測などのデータをもとに人員配置を設計していた経験から、「数字で設計しながらも、現場の感覚を反映させる」という営業スタイルを確立していきました。 このときに培ったBtoB営業の考え方や、お客様の立場に立って提案する姿勢は、現在のビルメンテナンス事業における営業活動にも大きく活きています。
―――コールセンターから八洲管理に転職したんですか?
佐藤 はい、2013年に転職し、八洲管理に入社しました。
当時は、祖母から引き継いだ父が社長として経営に携わっていました。
父自身も勤め人としてのキャリアが長かったこともあり、私に対して家業を継ぐことを強制することはありませんでした。
私自身も、入社を決意するまでは「必ず継ぐ」という意識があったわけではありません。
ただ、一度きりの人生の中で、経営に挑戦できる環境が自分にあるのなら、やらずに後悔するより、挑戦してみたい――。そう思い、家業に入る決断をしました。
大きな覚悟を掲げたというよりも、「挑戦できる機会があるなら飛び込んでみよう」という、自然な流れの中での選択だったと思います。
―――八洲管理に入社して順調でしたか?
佐藤 入社して驚いたことの一つは、当時の業界における利益水準の低さでした。今以上に価格競争が激しく、「このままではジリ貧になってしまう」という強い危機感を抱いたことを覚えています。
とはいえ、いきなり大きく変えることはできません。まずは自ら現場に入り、業務を徹底的に理解すると同時に、前職で培った営業力を活かして新規開拓にも力を入れていきました。2014年には、取引先であった警備会社様へ出向する機会をいただき、警備会社の営業担当として案件獲得に携わりました。受注した案件の中には、協力会社として八洲管理が業務を担う契約も多く、結果として当社の売上拡大にもつながりました。
この出向を通じて築いた警備会社様との関係は現在も続いており、今もなお大切なお客様としてお付き合いをさせていただいています。
入社から数年が経った頃、この業界でお客様を本当に幸せにするためには、会社としての「規模」と「基盤」が不可欠だと考えるようになりました。高品質で安定したサービスを継続し、さらに発展させていくためには、強固な事業基盤が必要だと実感したのです。
出向終了後も、お客様から新たなお客様をご紹介いただく流れを大切にするとともに、地域団体での出会いを通じて安定的な協力会社網を構築しました。そうして毎年少しずつ管理物件を積み上げることで、着実に事業を拡大してきました。

―――会株式会社SalesNow(本社:東京都渋谷区、代表取締役:村岡功規)様が発表された、人口の多い全国30都市を対象とした「従業員数増加率ランキング」において、広島市に本社を構える企業の中で第3位に選出されたんですね。
佐藤 知り合いから話を聞いて、自分でも少し驚きました。ちょうどそのころ、受注が重なったタイミングでもあり、会社の成長も実感できました。
―――案件を受注すると人手が必要ですが、採用はどう対応していますか?
佐藤 採用については、従来の紙媒体から撤退し、現在は主にWEB媒体を活用しています。
数年前から取り組み始めましたが、当初は私自身が担当していたものの、掲載してもなかなか成果につながらない時期が続きました。
現在は採用担当の課長が中心となって進めています。非常に研究熱心な人物で、WEB媒体のアルゴリズムまで学び込み、求職者の検索結果や閲覧ページで上位表示されるよう戦略的に設計してくれています。その結果、応募数や質の面で明確な成果が出るようになりました。
彼の求人に対する感覚やセンスは、率直に言って外部に出しても十分に通用するレベルだと思います。それほど本気で研究し、結果を出してくれており、当社の採用基盤を支える大きな存在になっています。
―――採用で重視しているポイントは何ですか?
佐藤 求職者の方が面接に来られた際、まず私が注目するのは「ドアを開けた瞬間の印象」と「最初の一声」です。能動的に挨拶ができるかどうかは、現場で働くうえでの基本姿勢を測る大切な指標だと考えています。
一方で、コミュニケーションの負荷が比較的少ないポジションもあります。そのため、必ずしも対人スキルだけを重視しているわけではありません。
応募者の中にある「どこか一つの強み」を見つけることができれば、その人は必ず活躍できると考えています。面接では30分以上かけてじっくり話を伺い、良い点を深掘りしながら、その人が持つ可能性を引き出すことを大切にしています。
―――業界全体として人手不足と言われている中で、他に取り組んでいることはありますか?
佐藤 2026年1月、当社では初めてベトナムから技能実習生2名を受け入れました。
昨年、現地に赴いて面接を行い、翌日にはご家族とも面談しました。ここまでは一般的なプロセスですが、私たちはその後、実際に就労が始まるまでの関わり方を特に大切にしました。
送り出し機関で研修に励んでいる期間には、少しでも励みになればとビデオメッセージを送りました。また、12月に来日し監理団体で研修を受けている時期には、社員10名で会いに行き、入社前座談会を開催しました。直接顔を合わせて歓迎の気持ちを伝えることで、不安を安心に変えたいと考えたからです。
私たちは、単なる労働力として迎えるのではなく、共に働く仲間として迎えたい。その思いを言葉だけでなく、行動で示すことを大切にしています。

―――今後、会社をどのようにしていきたいですか?
佐藤 私は、会社として従業員全員が一体感を感じられる組織でありたいと考えています。
最近、管理部のスタッフと話をする中で、当社の定着率が非常に高く、ほとんど社員が退職していない状況だということを改めて実感しました。
これは現場でのコミュニケーションを大切にしていることが大きいと思います。
私自身も年に数回、社内向けにメッセージを配信したり、双方向の対話を意識して関わるようにしています。
こうした対話を重視した経営によって、社員が安心して長く働ける環境が作れているのだと思います。
社員が定着し、現場の関係性が安定すれば、お客様への対応の質も自然と高まります。それが信頼の積み重ねとなり、応用力や提案力の向上にもつながっていきます。
今後も、無理に規模や新規性を追い求めるのではなく、現場との対話と関係性を何より大切にしながら、着実に会社を育てていきたいと考えています。
―――会社として新たな取り組みはされていますか?
佐藤 私は新しいことを次々と打ち出すことよりも、今ある事業を着実に積み重ねることを大切にしています。
振り返ると、頭だけで考えた施策は、思ったほど成果が出ないことが多い。一方で、うまくいった取り組みには、必ず自分自身の強い思いがありました。
だからこそ、自分が心から腹落ちしていないことに無理に取り組む必要はないと考えています。逆に、本当に心が動くことであれば自然と力が入り、結果にもつながる。ビルメンテナンス以外の分野で、将来そうしたテーマに出会う可能性もあるかもしれませんが、今は足元の事業を磨くことに集中しています。
現在は、自社の強みを広げる取り組みは着実に進めています。
当社グループには、関連会社である株式会社ビルクライムがあります。ビルクライムは高所ガラス清掃を専門とする会社で、八洲管理のサービス領域を拡張する役割を担っています。
グループとして高所ガラス作業まで一貫対応できる体制を整えたことで、総合力の向上とお客様からの信頼獲得につながっています。単体では対応が難しいニーズにも応えられる点は、当社の大きな強みです。
さらに昨年からは、既存の窓ガラスに塗布することで日射遮蔽や断熱効果を高める「節電ガラスコート」の提供も開始しました。今年はこのサービスを本格的に提案していきたいと考えています。
南向きのガラスが多いオフィスや工場、住宅では、夏場の空調費削減が期待できる点が特長です。既存のお客様にもメリットのある付加価値サービスとして、定期清掃の空き日を活用しながら、月1件程度の施工を目標に提案を進めていく予定です。

Corporate Information
- 八洲管理株式会社
- 〒733-0032 広島市西区東観音町19-1
- TEL: 082-232-7871(代表)
- 代表取締役社長 佐藤 秀雄 HP: https://www.yashimakanri.co.jp/
