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【生産性向上の支援・情報提供】ビルメンヒューマンフェア2025講演会レポート

2025/12/03 11:00

生産性向上の要は人材 導入企業が語るスポットワークの活用

2025年11月19日ビルメンヒューマンフェア2025の講演会A会場にて、「生産性向上の要は人材 導入企業が語るスポットワークの活用」セミナーが開催されました。

人手不足が深刻化するビルメンテナンス業界において、短時間労働(スポットワーク)をどう活用し、現場の生産性を高めていくのか。本セミナーでは、導入企業による具体的な活用事例や、最新データに基づく労働市場の実態が紹介されました。
講演にはビルメンテナンス企業の経営者、人材担当者、現場の責任者などが多くの方が参加しました。
この記事では、その講演内容をレポートします。


スピーカー
株式会社コウリョウ 代表取締役 持田優
株式会社タイミー カスタマーサクセス ビルメンテナンス業界専任チーム 姥谷和也
ファシリテーター
全国ビルメンテナンス協会 会員支援委員会 人手不足対策事業運営WG座長 森脇大統

1. スポットワークサービスの概要と労働人口の動向

まずは、株式会社タイミーの姥谷氏より、サービスの概要と労働人口の現状について説明がありました。

(姥谷)
「タイミーは2017年に創業した会社です。“働くを通じて、人生の可能性を広げるインフラをつくる”というミッションを掲げ、“働きたい”という気持ちを持つ方が、もっと気軽に一歩踏み出せるよう、スキマ時間でも働ける仕組みを提供しています。

面接なしで即日から働ける仕組みと、勤務時間・勤務地を柔軟に選べる自由度の高さが特徴で、登録者は年々増えています。

日本では人口減少が進み、それに伴って労働人口も年々減っており、2040年頃には働き手の不足がさらに深刻になるというデータがあります。私たちは、まずスキマで働ける方に働いていただくという形でサービスを展開しています。そのうえで“もっと働きたい”という方がいれば、企業さまの長期雇用につなげることができます。タイミーは全国で対応しているため、“このエリアは人が来ないのでは”という心配もなく、どの地域でもワーカーさんをご紹介できる体制があります。」

■現場で起きている課題と、タイミーが提供できる特徴

(姥谷)
「ビルメンテナンス企業さまから伺う課題には、次のようなものがあります。

・慢性的な人手不足
・作業員の高齢化
・書類・面接での見極めの難しさ
・試用期間での離脱
・定着しない
・長時間労働
・役職者が現場に入らざるを得ない
・本来業務ができない
・残業代の増加

まず、作業員の高齢化という問題は、多くの事業者さま、また業界全体で課題感としてあるかと思います。

タイミーの登録者は1100万人以上います。その中でよく驚かれるのが、40代までの若い年齢層が83%を占めている点で、『意外と若い方がよく集まるね』と喜んでいただけることが多いです。

また、希望する勤務時間帯や属性も多様です。副業の会社員、土日だけ働く人、早朝だけ働く人など幅広い方が利用しており、実例として、朝の数時間だけ働いてから本業に向かうワーカーさんのお話もあります。

さらに、一度来ていただいた方に“このワーカーだけに募集を公開する”という設定も可能で、現場で働いている姿を見てから判断できるという点も特徴です。

スポットで働いた方を、企業さまが長期雇用されるケースもあり、長期採用に至る場合は無料です。面接や書類では分からない部分が、現場で分かるという点が、雇用のミスマッチを減らせる特徴になっています。

企業さまは管理画面で以下の情報を確認できます。

・名前
・電話番号
・平均グッド率
・他社での評価

“面接がないのは不安”というお声に対しても、対応できる仕組みを整えています。他社での評価が確認できること、遅刻・欠勤へのペナルティ制度を設けていることなどにより、無断欠勤や直前キャンセルが多いワーカーは次のマッチングが難しくなっています。」

現場で良い働きをしたワーカーを“限定グループ”に登録し、繁忙期などにその方だけへ募集を出すこともできます。こうした運用は実際に現場でも活用されています。

スポットワーク全体の利用者は1500万人以上になっており、働く動機も“お金”だけではなく、“普段とは違う仕事を経験してみたい”という方も増えています。」

2.大型ショッピング施設でのタイミーの活用事例

つぎに、株式会社コウリョウの持田社長より、大型ショッピング施設でのタイミー活用事例について具体的な説明がありました。

(持田)
「弊社は2019年からタイミーを使い始めました。最初は『無理だろう』という声も、現場の管理職から正直ありました。“タイミーで来る初めての方に清掃業務が務まるのか” という不安が大きかったんです。

ただ、実際にはスポットワークとしてだけでなく、採用にもつながる形で、今も活用しています。今回の事例として紹介しているのは、神奈川県海老名市の大型ショッピング施設です。

初めて来る方は不安ですし、現場側も同じように不安があります。そこで、作業に入る前に15分のレクチャーを行い、フードコート周辺や化粧室の作業補助などの業務を説明しています。最初は必ず既存社員と2人1組で、社員の目が届くところに入ってもらっています。

1か月、2か月、3か月と回数を重ねていくと、「また来たい」という人が増えてきます。そこで、タイミーのグループ限定公開の機能を使って、リスト化したワーカーさんに限定で募集を出し、慣れた方には1人で業務を任せるようにしています。

ちなみに、この現場の募集条件は
・時給 1,200円
・当時の最低賃金 1,162円
・ 交通費 1,000円
というものでした。

『そんな時給で来るのか』と驚かれる企業さんも多いのですが、タイミーでは“この時間なら働ける”というニーズがあるため、実際に人が来ています。」

■導入時の不安はどう解消したのか──現場で重ねた具体的な工夫とは

事例紹介のあとは、導入初期の不安や受け入れ体制づくりについて、ファシリテーターの森脇座長と持田社長の掛け合いで話が進みました。

(森脇)
「持田社長、事例のご紹介ありがとうございました。お聞きしたいのが、タイミーを導入された当初、現場の方々は不安はありませんでしたか? 特に、初めて来る方に任せるのは管理職として心配だと思うのですが。」

(持田)
「当初はやはり、“いや、これは無理だろう” という声がありました。ただ、通常のパートさんも、タイミーから来る方も、初めて現場に入ればお客様からは当社の社員として見られます。“外から来た方だから” とは言えません。

そこで、タイミーの方にはまず 15分の基本レクチャー をして、どのようにサポートし、どう仕事を進めるかを現場内でシミュレーションしました。
清掃未経験の方もいますので、最初は必ず既存社員と2人1組で入ってもらいました。」

(森脇)
「なるほど、“本当に任せられるのか?”という不安に対して、教育体制やサポートの形をつくることで解消されていったんですね。
では、もうひとつ気になる点として、急な欠員が出た場合の対応について伺いたいのですが、そこはどうでしたか?」

(持田)
「そこも最初は“本当にスポットワーカーの方が予定通り現場に来るのか?”と正直思っていました。ですが、例えば深夜12時にパートさんから欠勤連絡が入っても、その場でタイミーに募集を出すと 翌朝6時には必ず誰かが来ていました。これは私も驚きましたね。」

(森脇)
「深夜の欠員にも対応できるのは、確かに現場としても心強いですね。
では続いて、スポットワーカーの方が継続して来てくれるケースについても教えていただけますか?」

(持田)
「1回、2回、3回と回数を重ねると、ワーカーさん本人が 入館の流れや施設の動線、担当する清掃範囲 も自然と分かってきます。そのため、現場としても“この方は1人で大丈夫だな” と判断できるようになります。

実際に、 同じ現場に18回来ているワーカーさん もいますし、 35歳の女性で、すでに1人で現場を回している方もいます。」

(森脇)
「では、逆に“うまくいかない現場”にはどんな特徴があるのでしょうか?」

(持田)
「それは 管理職のスキル差 です。細かなやりとりや評価を伝えるのが苦手な管理職の現場では、タイミーだけでなく通常のパートさんでも定着しにくい傾向があります。」

(森脇)
「なるほど。ワーカーさんではなく現場側の要素が大きいのですね。
では次に、求人広告と比べた場合のコストについてもお伺いできますか?」

(持田)
「東京では時給1500円でも人が集まらないケースがあります。ですがタイミーの場合、“この時間なら働ける” という方が来ますので、ほとんど 最低賃金+50円程度 で募集しています。交通費を出しても、求人広告より安くなることもあります。」


(森脇)
「ありがとうございます。最後に、1人現場の運用についても教えていただけますか?」

(持田)
「例えば4人現場のような大型現場でタイミー活用体制を作り、そこで育った人が1人現場へ行けるようにしておきます。前もって 1人現場用のシフト構成 を作っておくんです。
大型現場と1人現場をこうしてつなぐことで、会社全体として強い運営ができるようになります。」

■データで見るビルメンテナンス業の“時間帯別マッチング率”

(森脇)
「持田社長、ありがとうございます。ではここから少し、タイミーさんにデータの観点でもお話をいただければと思います。実際に清掃・ビルメンテナンスの領域で、どれくらいマッチングしているのか、最新の数字で教えていただけますか。」

(姥谷)
「はい、では実際に清掃・ビルメンテナンスに絞ったマッチング率のデータを使ってご説明します。ご覧いただくと分かるとおり、どの時間帯でも、8〜9割は人が集まっています。10人募集したら、だいたい8〜9人は来るという数字です。」

「朝や早朝の時間帯でも同じで、求人媒体だと集まりにくい時間でも、タイミーでは普通に集まっています。

また、エリアによって「集まりやすい時間」と「集まりにくい時間」があります。例えば、6時開始は集まりやすい、8時開始はやや難しい といった地域差です。

求人数が多い時間帯でも、マッチング率自体は落ちていません。“埋もれる”ことはほとんどない というデータになっています。

例えば、開始時間を少しずらすだけで、人が確保しやすくなるケースもあります。そのあたりは、エリアごとのデータを見ながら、出せる範囲で、どのような募集をかけたらよいかアドバイスすることができます。」

3. 質疑応答

最後に、会場参加者との質疑応答が行われました。

質問①募集のルールについて
「募集の際は、報酬とか応募条件って、どこまで企業側で決めていいんでしょうか?ざっくり教えてもらえますか?」

(姥谷)
「募集ルールは、企業さんとワーカーさんの“直接の契約”なんですよね。
なので、企業さんが決めていただいて大丈夫です。
最低賃金さえ下回らなければ金額は自由ですし、1時間だけの募集もOKです。
“この時間だけ来てほしい”っていうニーズに合わせて出してもらって構いません。」


質問② 労災やトラブル対応について

「働きに来る方は企業の雇用になるんですよね?もし労災が起きた場合、責任は企業側でよいのでしょうか?」

(姥谷)
「はい、企業さんとワーカーさんの直接契約になりますので、労災も企業さん側の扱いになります。通常のアルバイトと同様、病院に連れて行くなど一般的な対応をお願いしています。」

(持田)
「物を壊すといったトラブルはほとんどありません。通勤途中のルート確認などは必要ですが、若い方も多く、労災が特に多い印象はありません。」


質問③ 入館方法や機密保持について

「商業施設や事務所ビルでは、入館方法やセキュリティの問題があります。機密保持はどうされているのでしょうか?」

(姥谷)
「機密保持契約書は求人原稿に添付して“応募時点で承諾したものとみなす”という運用が多いです。不安な場合は当日現場で誓約書にサインしてもらう方法もあります。
また、従業員入口が分からない場合は、求人原稿に地図を添付して“このルートで来てください”と案内するケースが多いです。コウリョウさんの現場でも同様です。」


4. 最後に

(森脇)
「ビルメンテナンス業界では、まだスポットワーカーの導入は始まったばかりという印象がありますが、飲食業やホテルではかなり使われています。テレビでもスポットワークについての特集が組まれるなど、こうした流れは広がりつつあります。今日のような成功事例を発信していくことで、業界としての“雛形”ができていくと思いますし、総合的な人手不足の緩和にもつながると考えています。本日はご参加いただきありがとうございました。」


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