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Q. 民法改正を受けて労基法の消滅時効も改正されたということですが、改正のポイントは何ですか?

2021/09/30 11:43

A. このたびの改正により、賃金請求権の消滅時効期間、記録の保存期間、付加金の請求期間が延長されました。

2021/09/30 12:00 更新

消滅時効に関する民法改正を受けて労働基準法も改正され、2020年4月1日から施行されています。以下に、その改正点を説明します。

民法改正に関連した労働基準法の改正点まとめ

賃金請求権の消滅時効期間が5年に延長

1つめの改正点は、賃金請求権の消滅時効期間の延長です。賃金請求権についての消滅時効期間を賃金支払期日から5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間は3年となります。なお、退職金請求権(従来から5年)などの消滅時効期間などに変更はありません。
この時効期間延長の対象となるものは、次のとおりです。
「金品の返還(労基法23条、賃金の請求に限る)」「賃金の支払(労基法24条)」「非常時払(労基法25条)」「休業手当(労基法26条)」「出来高払制の保障給(労基法27条)」「時間外・休日労働等に対する割増賃金(労基法37条)」「年次有給休暇中の賃金(労基法39条9項)」「未成年者の賃金(労基法59条)」。

記録の保存期間が5年に延長

2つめの改正点は賃金台帳などの記録の保存期間の延長です。保存期間延長の対象となるものは、以下の①〜⑧です。事業者が保存すべき賃金台帳などの記録の保存期間について、5年に延長しつつ、当分の間はその期間は3年となります。また、②⑥⑦⑧の記録に関する賃金の支払期日が記録の完結の日などより遅い場合には、当該支払期日が記録の保存期間の起算日となることを明確化しています。

  1. ①労働者名簿
  2. ②賃金台帳
  3. ③雇入れに関する書類 …… 雇入決定関係書類、契約書、労働条件通知書、履歴書など
  4. ④解雇に関する書類 …… 解雇決定関係書類、予告手当または退職手当の領収書など
  5. ⑤災害補償に関する書類……診断書、補償の支払、領収関係書類など
  6. ⑥賃金に関する書類……賃金決定関係書類、昇給減給関係書類など
  7. ⑦その他の労働関係に関する重要な書類 …… 出勤簿、タイムカードなどの記録、労使協定の協定書、各種許認可書、始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類、退職関係書類など
  8. ⑧労働基準法施行規則・労働時間等設定改善法施行規則で保存期間が定められている記録(※起算日の明確化を行う記録は、このうち賃金の支払いに係るものに限る)

賃金台帳などの記録の保存期間についての変更点

付加金の請求可能期間が当面3年に延長

3つめの改正点は、付加金の請求権が延長されたことです。付加金とは、裁判所が労働者の請求により、事業主に対して未払賃金に加えて支払を命じることができるものですが、割増賃金等の支払がされなかったなどの違反があった場合、この付加金を請求できる期間を5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間は3年となります。付加金制度の対象となるのは、「解雇予告手当(労基法20条1項)」「 休業手当(労基法26条)」「割増賃金(労基法37条)」「年次有給休暇中の賃金(労基法39条9項)」です。

今回の改正により、割増賃金の算定基礎に算入すべき手当が算入されていないで、不足分の遡及是正を労基署から勧告された場合、従来であれば2年でしたが、これが3年になりますので金額も増えてきます。労働者数が多いと多額の出費になることもありますので、注意をする必要があります。

森井労働法務事務所
森井 博子さん

もりい・ひろこ 元労働基準監督官で、全国各地を歴任。
著書に『労基署がやってきた!』(宝島社・刊)。
http://www.morii.jimusho.jp/

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