会社を引き継ぎ、現場・数字・組織に向き合う中で生まれた、新たな分野への取り組み
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株式会社全研ビルサービス
代表取締役社長 佐藤 典保 氏

―――どのようなお子さんでしたか?
佐藤 子どものころはかなりやんちゃで、自由奔放に過ごしていました。机に向かって勉強するよりも、外で友達と遊ぶことのほうが好きなタイプでした。スポーツも好きで、小学校ではサッカー、中学校ではテニスをしていました。
高校生の頃からはアルバイトを始め、居酒屋やスーパー、パチンコ店など、さまざまなアルバイトを経験しましたね。とにかく、色々なことに興味を持つタイプだったと思います。
―――子どものころから家業を継ぐことを考えていましたか?
佐藤 私は5人兄弟の末っ子なんですが、子どものころは家業を継ぐことなど考えていませんでした。父親も特別継がせる気もなかったと思います。特別興味を持っていたわけでもなく、父から仕事の話を聞く機会もほとんどなかったですね。
父は忙しくて家にいる時間も少なかったので、家業が身近な存在という感覚もありませんでした。
―――社会人になるタイミングでは家業を意識しましたか?
佐藤 当時は兄(長男)がすでに会社に入っていたので、自分が家業を継ぐとはまったく思っていませんでした。「自分は関係ないかな」と思って、学校を卒業してからは別の会社に就職して、3年ほど働いていました。
その後、転職を考えていていたタイミングで、父から「会社に入ってみないか」と声をかけられました。
兄たちが継がない流れになっていたこともあり、「父がここまで作ってきた会社がなくなってしまうのはもったいないな」という気持ちや、「自分にとっても貴重な経験になるかもしれない」と思い、入社したのがきっかけでした。
―――全研ビルサービスに入社して順調でしたか?
佐藤 入社して最初に関わったのは、大型施設の竣工後の立ち上げ清掃でした。当時は業界のことも仕事の流れも分からず、不安だらけのスタートだったことを覚えています。
その現場では、上司が建築会社とのやり取りや協力会社への指示を担当し、自分は補佐として入りました。専門用語も分からない状態でしたが、上司の仕事ぶりを間近で見ながら、「現場はこういう流れで動くのか」「お客さまとはこうやってやり取りするのか」と、少しずつ学んでいきました。清掃技術についても、ワックス作業やポリッシャーの使い方などを、現場で覚えていきました。
当初は手探りの状態で、「自分に向いているのか」と感じることもありましたが、現場の段取りやお客さまとのやり取りが分かってくるにつれ、仕事の流れが徐々に見えるようになっていきました。できることが増えるにつれて、最初から楽しいというより、自然と仕事に慣れ、やりがいを感じるようになっていった感覚です。
その後はグループ会社で定期清掃の実務を経験し、床清掃やガラス清掃など一通りの現場作業を学びました。その後、本社に戻って現場管理を担当し、清掃スケジュールの調整やスタッフ管理、お客さまとの打ち合わせ、品質改善などに携わってきました。
こうした経験を3〜4年ほど積み、27歳で常務に就任し、その半年後に社長となりました。

―――若くして常務、社長となり苦労はありましたか?
佐藤 若くして社長になりましたが、社員から大きな反発のようなものは特にありませんでした。社員の皆さんがしっかり支えてくれていたことも大きかったと思います。自分自身も、急激に会社を変えようとは考えていませんでした。
いわゆる「自分色に変える」というよりも、会長が築いてきた会社の土台を大切にしながら、無駄な部分を整理し、良いところを伸ばしていくことを意識していました。
実際の経営でも、強く引っ張っていくというよりも、現場の声を聞きながら「こうした方がいい」という意見を少しずつ取り入れ、働きやすい環境を整えていくような進め方でした。
また、兄(長男・次男)も現在会社に残っており、それぞれ役員や現場管理として会社を支えてくれています。兄弟それぞれが自分の得意な分野を担当しながら、自然な形で今の体制ができていると感じています。
―――社長としてどのようなことに取り組みましたか?
佐藤 代表就任後は、まず会社全体の数字や状況をしっかり把握することから始めました。現場で経験を積む中で「頑張っていても利益が残らない部分」や、「管理が複雑になりすぎている部分」が見えてきていたため、少しずつ整理や改善に取り組みました。
その一つとして取り組んだのが、不採算事業や赤字営業所の見直しです。当時は複数の営業所が慢性的な赤字を抱えており、利益を出している拠点にも負担がかかっている状況でした。
そこで思い切って3つの営業所を閉鎖し、売上は一時的に下がったものの、利益面や管理効率は大きく改善しました。
あわせて、採算の合わない案件については値上げ交渉も進めました。簡単ではありませんでしたが、「難しければ契約終了もやむを得ない」という覚悟を持って臨みました。その結果、地域によっては一時的に黒字化し、全体として収益構造の改善につながりました。
こうした見直しは、現場や契約先への説明を重ねながら進めたため、大きなトラブルや反発もなく、理解を得た上で実行することができました。同時に、本社を含め新潟や富山、長岡など各拠点でも同様の見直しを行い、早い段階で経営の基盤を整えることにつながったと感じています。
―――佐藤社長の考えを会社へどのように浸透させていったんですか?
佐藤 現場や部下への方針共有については、トップダウンで強く指示するというよりも、考え方を伝えながら徐々に浸透させていく形を大切にしていました。
「こうしろ」と一方的に指示するのではなく、「今こういう状況だから、こう変えていきたい」という背景や方針を説明し、そのうえで現場に判断を委ねる形です。一度伝えて終わりではなく、繰り返し共有することを意識していました。
最初からすぐに変化が出たわけではありませんが、数字や状況を共有し続ける中で、現場側も少しずつ改善意識を持つようになり、「ここは値上げが必要だ」「ここは改善した方がいい」と自分たちで考えて動いてくれるようになっていきました。
その後は数字をより見える化し、顧客ごとの売上や利益率を整理したうえで、「どこを改善すべきか」を現場と共有しながら進めていきました。継続的に見直しを行うことで、会社全体の収益構造も徐々に安定していきました。
こうした進め方は、強いトップダウンで動かすのではなく、考え方を共有し、現場の判断を引き出すスタイルです。その結果、現場側も徐々に納得感を持って動くようになっていると感じています。

―――今後の事業の方針を教えてください。
佐藤 今後については、無理に既存のビルメンテナンス事業を拡大するのではなく、既存の基盤を維持しつつ、新しい分野への展開を進めています。例えば教育事業や医療分野、海外事業、外国人材の受け入れ組合の立ち上げなどにも取り組んでいます。こうした新たな取り組みを通じて、会社全体の成長につなげている状況です。
―――具体的に現在取り組んでいることはありますか?
佐藤 現在はインドネシア・バリ島で観光客向けのスパ事業(店名 Kubu Bali Luxury Spa)を展開しています。現地の運営は基本的にパートナーに任せ、日本側ではネット集客やホームページ、広告などのマーケティングを担当しています。定期的にオンラインで打ち合わせを行いながら、運営状況を調整しています。
口コミ評価も高く、Googleレビューでは4.9と良好な評価をいただいており、観光客を中心に多くのお客さまにご利用いただいています。口コミや人とのつながりを通じて、少しずつ広がっている状況です。
また、本業であるビルメンテナンス業界では人手不足が大きな課題となっているため、外国人材の受け入れ組合(組合名 ITS事業協同組合)の立ち上げにも取り組んでいます。今後は外国人材の活用もさらに重要になってくると感じており、自社だけでなく、業界全体としても受け入れ環境を整えていく必要があると考えています。
―――新たな事業を始める際はどのように進めていますか?
佐藤 事業判断については、基本的に自分主導で進めており、会社へは事後報告という形を取ってきました。反対や大きな議論を重ねるというよりも、「まず動いて形にする」というスタイルで進めています。
考え方としては、失敗を前提にするのではなく、「まずやってみて、うまくいかなければ改善すればいい」というスタンスです。そのため、仮にうまくいかなかった部分も“失敗”ではなく“経験”として捉え、次に活かす考え方で進めてきました。
今後についても、無理に拡大するというよりは、それぞれの事業を安定させながら、状況を見て新たな展開を考えていく方向性です。




―――今後、会社をどのようにしていきたいですか?
佐藤 まずは会社の基盤をしっかり整えた上で、次のステップとして若手への世代交代や新しい取り組みを進めていきたいと考えています。業界全体としても高齢化が進んでいるため、今後は若い世代が中心となって新しい動きを生み出していくことが重要だと考えています。
具体的には、30〜40代の次世代の幹部候補も少しずつ育ってきています。そのメンバーを連れて、研修を兼ねたミーティングや旅行のような形も今後は考えています。まだ全体として一つにまとまって動く段階までは至っていませんが、それぞれに実力があるため、現在は各自の持ち場で成果を出してもらっている状況です。
会社としては、細かく管理するというよりも、成果が出ていれば基本的には任せるスタイルです。一方で、結果が出ていない場合や、チームとしてうまく機能していない場合には、必要な指摘や調整を行うというバランスで運営しています。今後は、それぞれの強みを活かしながら、より組織としての一体感をつくっていくことが課題だと考えています。
そして、根本にあるのは、従業員が喜んで働ける会社をつくることです。そこが実現できれば、自然と従業員の質も高まり、その結果としてお客さまへのサービスの質も向上し、満足度の向上につながっていくと考えています。
その上で、自分自身としては新規事業の安定化や新しい分野への挑戦も並行して進めていく方針です。大きく一気に拡大するのではなく、会社の許容範囲の中でリスクを抑えながら、安定と挑戦をバランスよく積み重ねていく形を大切にしています。
最終的には、従業員にとっても、お客さまにとっても快適で、安心して働ける環境をつくることを目指しています。

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