急な欠員も怖くない!今すぐ使える「スポットワーク」活用ガイド
働き方改革や採用難の影響で、ビルメンテナンス業でも現業職の人手不足が大きな課題となっています。従業員の体調不良や急な休暇、トラブル発生時の突発的な離脱など、一時的・緊急の欠員対応に悩む現場責任者も少なくありません。
本記事では、そんなときの解決手段のひとつ「スポットワーク」の仕組みから、現場に導入するためのステップまで、注意点も踏まえて解説します。
●「スポットワークサービス」が現場を助ける
現場への配置が前提となるビルメンテナンス業界において、スタッフの突然の欠員は運営に直結する深刻な課題です。感染症の流行や他現場への応援、急な家庭の事情など、突発的な欠員のリスクをゼロにすることは不可能です。
一方で業界の人手不足も深刻で、ザイマックス不動産総合研究所「人手不足に関する実態調査」によると、現場で働く従業員が「とても不足」「やや不足」と回答したビルメンテナンス事業者の割合は92%と、大変厳しい現状です。
参考:ザイマックス不動産総合研究所「ビルメンテナンス業の人手不足に関する実態調査~人手不足問題の解決に向けて(第4回)~」
人材に余力がない中、現場責任者が自ら欠員の穴埋めに追われるなど、負担が偏りがちです。しかし、こうした欠員の対応を現場責任者に任せきりにすることは、現場の士気や管理の質の低下といったリスクにつながります。
そこで、欠員の新たな解決策として「スポットワークの活用」を検討してみてはいかがでしょうか。
●ビルメン現場と相性抜群な「スポットワーク」の仕組み
ビルメン業務は、手順の決まったルーチンワークや有資格者の指示に基づくペア作業などが多く、スポットワークと親和性が高いといえます。例えば点検・巡回業務の補助や、メンテナンス業務で回収したフィルターの洗浄といった業務は、初めてのワーカーでも即戦力として任せやすい内容でしょう。
こうした現場の特性を活かし、突発的な欠員を解消するスポットワークの具体的な仕組みを解説します。
・最短数時間から即マッチング可能
スポットワークは「隙間バイト」「単発バイト」などとも呼ばれます。多くのスポットワーク仲介サービスでは、初期費用や掲載費用は不要で、ワーカーが稼働した時間分の時給とサービス利用料、振込手数料を後払いでサービス事業者に支払う仕組みです。
マッチングは先着順のため、複数の応募者を受け付けて合否を決める「面接」はできません。最短で1時間から仕事を設定できますが、2時間~5時間の範囲がマッチしやすいでしょう。
スポットワーク仲介サービス市場は年々拡大しており、スポットワークの先駆者である「タイミー」の売上高は342.89億円、登録ワーカー数は1,274万人超(共に2025年度)と拡大が続いています。他にも「シェアフル」「LINEスキマニ」「スポットバイトル」「ショットワークス」など、多くの事業者が参入しています。
・手順が明確な「ルーチン業務」との親和性
スポットワークと親和性が高い業務は、初めて経験する人でも対応できるシンプルな作業や、指示命令をする人のサポートなどです。きちんとマニュアルがあり、手順が明快なビルメンテナンス業界のルーチン業務と親和性が高いと言えるでしょう。
例えば、点検・巡回業務であれば2人一組のうちのひとりとして常に指示を出せる状態を確保する、メンテナンス業務で正社員が回収してきたフィルターの洗浄を任せるなど、単一の反復業務がスポットワーカーに任せやすい内容です。
・ワーカーの属性と評価制度
スポットワークサービスに登録しているワーカーの属性は多種多様です。18歳以上からシニアまで幅広く、運転免許証など、求人で必要な資格を設定することも可能です。
また、一度働いてくれて「また応募してほしい」と感じたワーカーを「お気に入り」に登録する機能も一般的です。リピーターだけに求人を公開する、他社で高評価を得たワーカーに優先して求人を公開するなど、実績の確かな人材を確保しやすい仕組みもあります。
・採用・給与支払事務の自動化で管理コストも削減
スポットワークの大きなメリットに、現場の採用手続きの負荷軽減があります。
スポットワークは「派遣」や「業務請負」ではなく、指揮命令が可能な「直接雇用」ですが、労働条件通知書の作成や勤怠管理、給与支払報告書や給与の受け渡しなどの労務機能はすべてスポットワーク仲介事業者側で代行してくれます。
「当日払い用の現金を用意する」「後日振込のための銀行口座を確認する」といった作業工数もかからないため、現場の手続き負担が軽いのは大きなメリットです。
●スポットワーク導入を成功させる4つのステップ
スポットワークをうまく活用できるかどうかは、事前の準備にかかっているといっても過言ではありません。スポットワークを導入するにあたって、事前に準備しておきたい4つのステップについて解説します。
・ステップ1:業務の棚卸しとマニュアル整備
業務の棚卸しは、スポットワーク導入の成否を分けるもっとも大切なステップです。現在の業務を「経験者の判断、もしくは有資格者の対応が必要な専門業務」「初心者でも対応可能な定型業務」に切り分けます。
このとき、できるだけ細分化し、担当者がついていなくても業務内容を確認できるマニュアルまで作成できると、スポットワークに依頼できる仕事の幅が広がります。控室や備品置場、利用可能なトイレの案内まで含め、現場ごとに作成しておくと当日の現場の負担が軽減でき、業務に集中してもらえる時間をより長く確保できます。
自社の管理業務にはどのような作業があり、対応するためにはどのような能力が必要か整理する際の参考として、厚生労働省がまとめた「職業能力評価基準」などを活用してみてはいかがでしょうか。
参考:厚生労働省「職業能力評価基準_39_ビルメンテナンス業」
・ステップ2:マッチング率を高める募集の設計
業界最大手「タイミー」では、掲載案件の募集人数に対して勤務確定した「マッチング率」は90%以上となっています。希望する人材とマッチする可能性を高めるには、募集要項の具体化と、近隣相場を参考にした適切な時給設定が不可欠です。
募集要項では仕事内容がイメージできる写真を用意し、キャッチコピーでは50字程度で職種や仕事の特徴、求人のメリットなどをわかりやすく説明するなど、きめ細かな工夫で良い人材が集まりやすくなります。
キャッチコピー例:【高圧洗浄機でスッキリ清掃補助】7割は早上がりで高タイパ!最短3時間でも5時間保証★交通費一律千円
また「20キロ以上の荷物を数メートル運ぶことができる」「1.2m程度の脚立にのぼることがある」など、仕事を選択するうえで必要な能力や体力についてもしっかり記載することが大切です。
加えて、服装や髪型、交通手段の可否、道具の貸与など、応募のハードルになりそうな点は可能な範囲で柔軟に設定するとよいでしょう。
・ステップ3:事業者を選びアカウントを作成
スポットワーク事業者を選定する際は、自社の求人内容と同様の職種の募集が多いところを優先して選定するのがよいでしょう。
一般的なスポットワーク事業者では、「最短即日」で求人を掲載できます。まずは連絡先として担当者のメールアドレスなどを登録し、オンライン上の手続きで求人掲載用アカウントを開設します。アカウントは「事業者用(求人を掲載したい)」と「ワーカー用(仕事を探したい)」に分かれているため、間違えないように注意してください。
アカウント開設の際は、法人であれば法人印鑑証明書、個人事業主であれば開業届や営業許可証などの提出が必要な場合があります。サービス事業者によって必要な書類は異なりますので、アカウントを設定する前に確認しておきましょう。
・ステップ4:リピーター確保と直接雇用への活用
スポットワークでは、サービス利用後のひと工夫でその後の募集がぐっとスムーズになります。以前も働いてくれて仕事を覚えている人に優先的に案内できれば、任せられる仕事の範囲も増え、ミスマッチの心配もせずに済みます。
多くのスポットワーク仲介事業者では、このように優先的に仕事をリクエストできる仕組みが用意されています。例えば「業務の終了時に優先的なお仕事案内に登録を声がけする」等の簡単な手続きでリピーターを増やすことができます。
また、長期契約などスポットワーク事業者を介さない直接雇用への勧誘も可能です。人材確保の一手段として活用している企業も少なくありません。
●まとめ:まずは閑散期のテスト利用から始めよう
スポットワークは突発的な人員不足が起こったときに対処できる一つの手段として、現場責任者の精神的な「お守り」の効果を発揮します。
そのためにはスポットワークの仕組みを理解し、どのような業務を任せられるか作業を切り分け、何を依頼するか決めておくことが不可欠です。それに加え、どのような応募があるか、応募が来る適正な時給はいくらかなどについてあらかじめ知っておく必要があります。
スポットワークサービス初回の利用は繁忙期ではなく、業務の閑散期にお試ししておくと、フォローできる余裕があるのでおすすめです。良い人材にマッチできれば、人材確保の手法としても期待できるスポットワーク。自社に合った活用スタイルを検討してください。
沼田絵美
国家資格キャリアコンサルタント/フリーライター。
人材系広告会社での営業を10年経験後、独立。大学キャリアセンター相談員やキャリア講師、企業の採用支援、採用広報取材など、20年以上にわたり「就職・採用」に関する業務に携わる。特に建設・不動産・住宅業界の採用に精通している。
