高年齢者雇用安定法

2021/10/19 14:00 更新

少子高齢化が急速に進行する我が国において、経済社会の活力を維持するためには、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備を図っていくことが重要です。このため、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年齢者雇用安定法」)が改正され、令和3年4月1日から70歳までの就業機会を確保する措置を講ずることが事業主の努力義務となりました。

65歳までの雇用確保措置と70歳までの就業確保措置

高年齢者雇用安定法においては、今般の改正法が施行される前から、事業主は定年を定める場合は60歳を下回ることができないとされており、その上で、65歳までの高年齢者の雇用機会を確保するための措置(以下、「雇用確保措置」)を講じなければならないとされています。
具体的には、以下①〜③のうち、いずれかの措置を講じることとされています。

  • ①65歳までの定年年齢の引上げ
  • ②65歳までの継続雇用制度の導入
    ※自社又は特殊関係事業主(いわゆるグループ会社)
  • ③定年制の廃止

一方で、今般の改正法により努力義務とされた65歳から70歳までの就業機会を確保するための措置(以下、「就業確保措置」)においては、以下の①〜③といった雇用による措置に加えて、④〜⑤といった雇用によらない措置(以下、「創業支援等措置」)が新設されました。

  • ①70歳までの定年の引上げ
  • ②70歳までの継続雇用制度の導入
    ※自社又は特殊関係事業主、それ以外の他社を含む
  • ③定年制の廃止
  • ④70歳まで継続的に業務委託契約等を締結する制度の導入
  • ⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
    ※有償の(業務に従事することにより、高年齢者に金銭が支払われる)ものに限る
    • a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
    • b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
    • なお、創業支援等措置を講じる場合は、雇用による措置と異なり、労働関係法令が適用されません。このため、次の(1)~(3)の手続を行う必要があります。

      • (1) 創業支援等措置の実施(業務の内容や高年齢者に支払う金銭等)に関する計画の作成
      • (2) (1)の計画について過半数労働組合等の同意を得る
      • (3) (2)の同意が得られた計画を労働者に周知する
      • この(1)~(3)の手続を経て制度を導入した後は、当該計画に沿って、個々の高年齢者と業務委託契約等または社会貢献事業に従事する契約を締結する必要があります。

        70歳までの就業確保措置を講じるに当たっての留意点等

        70歳までの就業確保措置を講じる際の具体的な手続や留意点等については、高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針等に記載されていますが、ここではその概要や考え方について、いくつかご紹介します。
        ※高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第180号)
        ※高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針(令和2年厚生労働省告示第351号)

        (1) 対象者基準について
        70歳までの就業確保措置については、努力義務ですので、措置の対象となる高年齢者について、基準を設けて限定することが可能となっています。ただし、基準の策定に当たっては、次の事項に留意する必要があります。

        ・対象者基準の内容は、原則として労使に委ねられるものですが、事業主と過半数労働組合等との間で十分に協議した上で、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいこと。

        ・労使間での十分な協議の上で設けられた基準であっても、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど、法の趣旨や、他の労働関係法令・公序良俗に反するものは認められないこと。

        (2) 労使で協議すべき事項
        70歳までの就業確保措置として設けることができる5つの措置のうち、いずれの措置を講ずるかについては、労使間で十分に協議を行い、高年齢者のニーズに応じた措置を講じていただくことが望ましいとされています。

        (3) 安全衛生について
        高年齢者が従前と異なる業務等に従事する場合には、新しく従事する業務等に関して研修、教育、訓練等を行うことが望ましいです。特に雇用による措置を講じる場合には、安全又は衛生のための教育は必ず行わなければなりません。

        また、高年齢者が安全に働ける環境づくりのため、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」を参考に、職場環境の改善や健康や体力の状況把握とそれに応じた対応など、就業上の災害防止対策に積極的に取り組むことが望ましいです。

        おわりに

        人生100年時代を迎える中、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮し、活躍できる環境を整備することが求められます。就業確保措置の導入に当たっては、高年齢者にとっては自分の能力を活かして働けるように、また事業主にとっては経験豊富な人材を確保できるように、高年齢労働者と事業主とで、個々によく対話を重ねながら制度設計を行っていただくことが重要です。
        今回紹介した指針や、70歳までの就業確保措置に関する詳しい情報は厚生労働省のホームページに掲載されていますので、そちらも是非ご覧ください。

        詳しくはこちらをご確認ください。

        文/厚生労働省 職業安定局高齢者雇用対策課