地域に必要とされる会社であり続けるために
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株式会社三島美装
代表取締役社長 杉崎 亮慈 氏

―――三島美装のこれまでの歩みを教えてください。
杉崎 三島美装は、私の父が1975年に創業しました。それ以来、三島の地でビルメンテナンス業を続けています。
私が入社したのは、大学卒業後、約1年半が経ってからです。大学では工業化学を専攻し、卒業後は埼玉の工場で品質管理の仕事をしていました。ティッシュペーパーの箱やファストフード店のポテトの箱、牛乳パックなどを扱う仕事で、ビルメンテナンスとはまったく違う世界でした。
実は、最初から家業を継ごうと思っていたわけではありません。仕事をする中で、経営など、自分で会社をマネジメントしていくことに興味を持つようになったんです。
そんな中、父から「自分で体を動かしながらやるのであれば、なくならない仕事だからいいと思う。その覚悟があるなら帰ってきなさい」と言われたことも、三島美装に入るきっかけになりました。
その後、現場の仕事だけでなく、会社の経営や地域活動にも携わるようになり、2019年(令和元年)に社長に就任しました。
会社としては、これまで特別に手広く事業を広げてきたわけではありません。ずっと地元の中で、淡々と仕事を続けてきたという感じですね。
―――これまでを振り返って、転機になった出来事は何でしょうか?
杉崎 一番大きかったのは、30代半ばから後半くらいの頃に、地域の仲間とNPO法人(※1)を立ち上げ、地域活動を始めたことです。現在は「みしま未来研究所」というコミュニティスペースを運営しています。
地域づくりの活動では、地域の人たちとさまざまなことに取り組みました。
その一つが、ここ三島での本格的な映画制作(※2)です。宿泊場所の提供や食事の用意、ロケの手伝いなど、地域のさまざまな人が関わってくれました。その経験を通して、「地域の中で仕事が生まれ、その仕事がまた地域に循環していく」ということを実感したんです。この経験が、自分の仕事に対する考え方を変えるきっかけになりました。
私は、清掃が好きでこの仕事に入ったわけでも、職人気質でもありません。
でも、「地域の経営者」という立場だからこそ、会社が発展すること自体が、地域に対するアクションになるんじゃないかと思うようになりました。自分の会社でできることを通して地域に役立つ。そうすれば地域が良くなり、結果として会社にも仕事が入ってくる。会社も地域も良くなる。その循環が、自分がこの仕事をしている意味や、幸せにつながっているんだと思います。
(※1)NPO法人みしまびと:静岡県三島市を拠点に「地域の未来をつくる人をつくる」を理念として、まちづくりや地域活性化に取り組む団体。コミュニティスペース「みしま未来研究所」の運営なども行っている。(リンク:https://mishima-mirai.com/)
(※2)映画『惑う After the Rain』」2017年公開のヒューマンドラマ。結婚を控えた長女とその家族を通して、家族の絆を描く。NPO法人みしまびとが中心となり、三島市を中心とした地域の人々が参加して制作された市民参加型の映画。(リンク:http://madou.jp/)
―――地域活動を経験したことで、会社や仕事に対する考え方にも変化があったのでしょうか?
杉崎 そうですね。
地域の方から仕事をいただくと、「変な仕事はできない」という思いがあります。
どこかから来た営業所が、仕事が終われば別の場所へ行ってしまうのとは違って、私たちはずっとここで仕事を続けています。
だからこそ、地域の知り合いや仲間からいただいた仕事には、きちんと応えたい。「変な仕事をしたくない」という思いで仕事をしています。
そうやって地域のつながりの中で仕事をいただき、一つひとつきちんと応えていく。その積み重ねの中で、仕事そのものの面白さも感じるようになりました。

―――一方で、今のビルメンテナンス業界では、人手不足や高齢化などの課題もあります。どのように対応されていますか?
杉崎 人手不足は、今の時代、皆さん同じように感じていると思います。
特に現場の仕事は、なかなか自動化できません。自動洗浄機などもありますが、それだけで人手不足を解消するのは難しいと思っています。
だからこそ、バックオフィスや管理の部分は、できるだけ自動化を取り入れています。三島美装では、会社の規模に比べて、総務や財務などの業務を少ない人数で回せる仕組みを早い段階から作ってきました。
例えば、見積もりから請求、銀行との連携、社員が使う経費用のクレジットカードまで、できるだけ会計システムと連動させています。人事・労務についても、給与計算やタイムカードの計算などを自動化できるよう、仕組みを整えています。
現場では、管理ソフトを使って、誰がどこで、何時から何時まで仕事をするのかをスマートフォンで確認できます。現場ごとの注意事項や過去の問題なども記録して、必要なときに誰でも確認できるようにしています。
朝礼では、その画面を大きなモニターに映しながら、皆で確認しています。現場そのものを完全に自動化するのは難しい。だからこそ、今のところは「自動化できるところを徹底的にやる」という考え方です。
―――スマートフォンを使った仕組みは、高齢のスタッフの方も対応できていますか?
杉崎 そこにはやはり課題があります。
例えば給与明細も、電子で確認できるようになっていますが、「見られない」という人もいます。そういう場合は、紙に印刷してお渡ししています。
ただ、10年、20年と経てば、状況は変わっていくと思います。今の50代の人たちが70代になった頃には、みんなスマートフォンで見られるようになっていると思います。 だから今は、「できる人」と「できない人」がいることを前提に、両方に対応できる仕組みを作っていくことが大切だと思っています。誰かを取り残すのではなく、できる人には新しい仕組みを使ってもらい、できない人には別の方法を用意する。そうやって、少しずつ進めていけばいいと思っています。
―――現場で働く社員の皆さんには、どんなことを大切に仕事をしてほしいと伝えていますか?
杉崎 一番は、現場内のコミュニケーションですね。
この仕事を辞める理由は、仕事そのものや時間、場所というより、人間関係が原因になることも多いと思っています。人手不足の中で、人間関係が悪くて誰かが辞めてしまうのは、すごくもったいないことです。
一人が気持ちよく働いている一方で、我慢している人がいる。それでは良くないと思います。だから、仕事を教える人も、教えてもらう人も、お互いにコミュニケーションを取りながら、一つのチームとして働いてほしい。
「我慢している人の上に、できる人があぐらをかいている」という状態にはしたくないんです。みんなが気持ちよく働ける環境をつくることが大切だと思っています。
―――杉崎社長から見て、「この人はすごい」と思う社員の方はどんな方ですか?
杉崎 ずっと一緒にやってきた業務部長ですね。
彼は人との関係をつくるのが上手で、私にはない役割を担ってくれています。私が厳しい分、彼が優しくみんなをまとめてくれているんじゃないかなと思います。
私は、厳しいですよ(笑)。
必要なことは、しっかり、はっきり伝える。できるだけロジックで話すようにしています。その分、圧を感じる人もいるかもしれません。だからこそ、業務部長が従業員との間をうまくつないでくれているところに感謝しています。

―――会社を経営する上で、大切にしていることは何でしょうか。
杉崎 「この地域に、ビルメンテナンス会社として存在させてもらっている」ということだと思います。
もちろん、人や社員が大切なのは言うまでもありません。でも、「自分たちがいる」のではなく、「存在させてもらっている」。私は、「やらせてもらっている」という感覚を大事にしています。
ビルメンテナンスは、ほかの会社との差別化が難しい仕事です。誰がやっても、きちんとできていれば素晴らしい。
だからこそ、私たちを選んでもらい、問題なく仕事を続けさせてもらっていること自体がありがたいんです。定期的に報告書を出す、請求書をきちんと届ける。そうした当たり前のことを、当たり前に続けていく。それが、三島美装として仕事をさせてもらっているということだと思っています。
だから、安さで仕事を取りに行くようなことはしたくありません。スタッフにも「営業してバンバン仕事取ってきましょう」とは言っていません。今ある仕事をしっかりやって、きちんと管理する。その積み重ねが、仕事の紹介や人とのつながりにつながっていっていると思います。
ビルメンテナンスの仕事は、いわば昔からのサブスクモデルのようなものです。一社のお客様から、仕事がずっと続いていく。無理に誰かがやっている仕事を取りに行って会社を大きくするより、この地域で、今いただいている仕事をしっかり続けていく。それが自分たちには合っているんじゃないかと思っています。
―――外国人スタッフも採用されていますが、コミュニケーションの面ではどのような工夫をされていますか?
杉崎 現在、本社の特別清掃の部隊に、ベトナム人スタッフが4人います。
できるだけ近くに住んでもらい、4人一緒に生活していることも、良い部分だと思います。以前はすぐ隣の部屋に住んでいた時期もあって、お互いに目の届く距離にいる安心感がありました。
仕事でも、4人だけで動くのではなく、日本人スタッフと一緒に行動するようにしています。日本語や車の運転など、そうせざるを得ない事情もありますが、結果的に毎日のコミュニケーションにつながっています。
たまたま今の仕組みになっている部分もありますが、この良さは崩さない方がいいと思っています。
せっかく日本に来て、知らない場所で働いているわけですから、できるだけ楽しく日々を送ってほしいですね。
―――人手不足や高齢化、建物の老朽化など、さまざまな課題がある中で、これからのビルメンテナンス業界はどうなっていくと思いますか?
杉崎 正直、未知ですよね。
建物自体はこれからも増えていくと思いますが、働く人は減っていく。高齢化で辞める人も出てくるでしょうし、会社同士がM&Aで吸収されることもあると思います。
そうなると、仕事はあるのに、それを担う会社や人が減っていくことになります。
一方で、清掃という仕事は完全に自動化するのも難しい。
しばらくは70代の方が働くことで成り立つ部分もあると思います。でも、その先がどうなるのかは、私にも全然想像がつきません。
もしかしたら、ほかの業界が先に自動化され、そこから人がビルメンテナンス業界に流れてくることもあるかもしれない。自動運転が普及して運転手が減ったり、コンビニ等店舗の自動化が進んだりすれば、そこで働いていた人が別の業界に移ってくる可能性もあります。 だから、ビルメンテナンス業界だけを見ていても分からない。ほかの業界がどう変わっていくのかも見ていかないといけないと思います。
―――そんな中で、三島美装として、これから取り組んでいきたいことはありますか?
杉崎 今後は、もう少し専門的な仕事にも取り組んでいきたいと思っています。
例えば、電気や設備に関する技術管理や、高所でのガラス清掃などです。高所作業のような危険を伴う仕事でも、「ここなら安全に任せられる」と思ってもらえるような特別チームをつくり、この地域だからこそできる仕事に、少しずつ取り組んでいきたいですね。
また、将来的には東京など、もう少し人の多い地域で仕事をすることも選択肢の一つだと思っています。
ただ、そこを本格的に進めるタイミングは、息子たちの存在が大きいですね。
息子が2人いて、2人とも「やりたい」と言ってくれています。だから、彼らが会社をどうしていきたいのかを見ながら、必要なところに少しずつ投資していきたいと思っています。
一気に大きな勝負をするのではなく、少しずつ、少しずつ。仕事として成立するものを育てていくイメージです。
会社のこれからというのは、後継者を育てるか、M&Aをするか、廃業するか。大きく言えば、その三つだと思っています。
だからこそ、息子たちが「やる」と言ってくれた時に、会社として次のステージに進めるよう、今から少しずつ準備しておく。それが、これからの一つの目標なのかなと思います。
―――最後に、これからの三島美装が目指していく姿を一言で表すとしたら、どんな言葉になりますか?
杉崎 「地域に必要とされる会社になる」ということだと思います。
仕事を「やっている」のではなく、「やらせてもらっている」という感覚を持って、いただいた仕事にきちんと応えていく。
ビルメンテナンスは、毎日の暮らしや仕事の当たり前を支える仕事です。
だからこそ、その当たり前を、当たり前に続けていく。そうした仕事を積み重ねながら、この地域で必要とされ続ける会社になっていけたらと思います。

Corporate Information
- 株式会社三島美装
- 〒411-0812 静岡県三島市藤代町17番地の2
- TEL: 055-971-8696
- 代表取締役 杉崎 亮慈
- HP: http://mishimabisou.com/
