補助金の申請では、まず「採択されること」が目標になりやすいものです。しかし、採択された時点で事業が成功するわけではありません。むしろ、そこから申請書に記載した計画を実際に遂行する段階が始まります。申請時に採択だけを意識して無理な内容を盛り込むと、後になってその計画が事業者自身の負担となることがあります。実行時まで見据える必要があります。
特に注意したいのが、根拠以上に高い数値目標を設定するケースです。売上増加率や生産性向上の効果を大きく見せようとして、現実とかけ離れた数値を書くと、採択後はその目標を前提に事業を進めることになります。人員体制や営業力、市場の大きさなどが十分でなければ、計画値と実績の差が広がります。採択されたいという気持ちから、実態以上の成果を約束することは避けるべきです。
また、補助対象になるからという理由で、必要性の低い設備やシステムまで計画に加えるのも典型的な失敗です。「せっかく補助されるのだから、多く導入した方が得だ」と考えがちですが、補助されるのは取得費の一部にすぎません。導入後には保守、更新、操作教育などの費用も発生します。自己負担額も増えるため、結果として使い切れない設備を抱えることにもなりかねません。
工程を詰め込みすぎる計画にも問題があります。申請時には、短期間で事業を進める計画の方がスピード感を示せるように見えることがあります。しかし、実務では見積書の取得、発注、納品、設置、検収、支払いなど、多くの工程が必要です。工事や許認可が関係すれば、さらに時間を要します。余裕のないスケジュールでは、わずかな遅延が補助事業期間全体に影響し、期限内に完了できなくなる可能性があります。
設備の仕様や購入先を申請段階で安易に決めることも避けた方がよいでしょう。採択後に、より性能の高い設備や条件のよい業者が見つかったとしても、自由に変更できるとは限りません。変更内容によっては事前承認や手続きが必要になり、場合によっては補助対象から外れることもあります。申請前の段階から候補を比較し、導入内容を十分に検討しておく必要があります。
さらに、申請書の作成を支援者へ任せきりにすることも危険です。計画を実施するのは、最終的には事業者自身です。申請内容や数値の根拠を理解していなければ、交付申請や実績報告で説明を求められた際に対応できません。支援者が作った計画と現場の認識がずれていれば、実施段階で変更手続きが発生することもあります。申請書は外部に作ってもらうものではなく、自社が責任を持って実行する約束だと考えるべきです。
資金繰りを軽く見ることも、採択後の大きな問題につながります。補助金は通常、事業実施後の精算によって支払われます。採択直後に補助金が振り込まれるわけではありません。まず事業者が設備代や外注費などを支払い、事業終了後の検査や金額確定を経て、ようやく補助金を受け取ります。自己資金や融資枠を準備していなければ、採択されても支払いができず、事業そのものを進められない事態も起こり得ます。
採択後に後悔しないために必要なのは、「審査に通るように見える計画」ではなく、「実際に最後まで遂行できる計画」を作ることです。売上や生産性の数値、導入設備、工程、社内の実施体制、必要資金を現実に合わせて設計することが重要です。補助金申請では、計画を必要以上に大きく見せることよりも、採択後に無理なく実施し、申請時に掲げた成果へつなげられるかを重視しなければなりません。採択はゴールではありません。申請書で示した事業を、本当に実行していくための出発点なのです。
【記事提供:株式会社ナビット】
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