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『外国人材と共生に向けた新たな挑戦-建築物管理訓練センター&Global Gateway Japan の協業で築く新しい外国人材活用モデル』セミナーレポート

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「ビルメンヒューマンフェア&クリーンEXPO 2025」で開催された本セミナーでは、東急ビルメンテナンス常務取締役であり、Global Gateway Japan取締役副社長を務める鈴木 志 氏が、ビルメンテナンス業界の現状と、外国人材との協働による未来の可能性を語りました。外国人材の活用を考える方々にとって多くのヒントが得られる内容でしたので、その概要をご紹介します。


はじめに

不動産事業は「つくる・つかう・まもる」というプロセスから成り、なかでも “まもる” 領域の従事者は最も手を必要とする分野です。街づくりを支える多くの人が、建物管理や清掃、警備といったビルメンテナンスの仕事に関わっているのです。
しかし、建物は年々老朽化し、必要な手間は増加の一途をたどります。例えば築20年の建物では必要作業量が6〜10倍に膨れ上がるケースもあると言います。
つまり 建物は増え、老い、手間も増えるのに、働き手は減っている。このギャップこそ、業界最大の課題です。

減り続ける人口と「人」と「建物」の高齢化

日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少を続け、2050年にはさらに25%減ると推計されています。
ビルメンテナンス業界でも、約9割の事業者が「人手不足」を実感しており、清掃分野では60歳以上が約半数を占めるなど、高齢化が顕著です。
加えて、建物の利用者も高齢化が進み、建物の使われ方も変化しています。こうした複合的な変化に対応するには、知識と経験を備えた人材が不可欠ですが、現状ではその担い手が不足しており、「仕事はあるのに、やる人がいない」という状況が続いています。

外国人材の受け入れは “必要不可欠” な選択

そこで注目されているのが 外国人材 の活躍です。
2024年時点で在留外国人は359万人、就労者は215万人を超え、日本の基幹産業を支える重要な存在となっています。
なかでも特定技能制度は国を挙げた施策として拡大しており、特定技能外国人の受け入れ目標は2028年までに82万人へ上方修正 されました。
一方で、ビルクリーニング分野の特定技能外国人はまだ約4,600人と少なく、政府目標(今後5年間で37,000人)に対する 達成率はわずか12.5% にとどまり、大きく乖離しています。

では、なぜ少ないのでしょうか?

理由のひとつは、外国人材にとって日本で働くことは、就労先の選択肢のひとつにすぎないことです。また、賃金水準や日本語能力の要件の高さも影響しています。

お互いの “不安” 解消が定着の鍵

受け入れ企業側は「日本語」や「コミュニケーション」に不安を抱え、外国人側も「日本語の壁」「日本人との待遇差」「仕事で求められる知識・能力」など、多くの不安を抱えています。
つまり、採用するだけでは不十分です。
双方の不安を解消し、安心して働き続けられる環境を整えることこそ定着の鍵 だと鈴木氏は強調します。

“入国前からの育成” と★(スター)認証制度

外国人材が働きやすく定着しやすい仕組みを整えるため、入国前から段階的に学べる教育プログラムの提供が重要です。
企業面接前には面接合格のための基礎学習を行い、内定後は働くための基礎学習を実施。入国後は仕事で求められる内容を一人でできるようになるまで、段階的にサポートします。
講演で特に印象的だったのが ★(スター)サーティフィケイト制度です。
これは、仕事に必要な「コミュニケーション」「理解」「協調性」「応用力」などの項目を指標化し、個々の能力を可視化して評価する仕組みです。
客観的な評価により、受け入れ企業はその外国人材がどのくらいの能力を有しているのかを把握でき、外国人材自身も成長を実感して自信につながります。

建築物管理訓練センターの新たな取り組み

今年11月からインドネシアで開設された新たな教育拠点「ビルメンテナンストレーニングセンター」について、建築物管理訓練センター事務局長の渡辺氏より紹介がされました。
このセンターでは、日本に来る前の外国人材が、建築物管理訓練センターの指導内容に基づき、日本の清掃基準や必要な技術を事前に学べる仕組みを提供しています。“現地で日本で働く準備を完了できる” プログラムとなっています。
この取り組みにより、外国人材は入国後のギャップを最小限に抑えてスムーズに就労を開始でき、受入れ企業側にとっても教育負担の軽減やミスマッチ防止につながります。
技術や価値基準を事前に共有することで、双方に安心感のあるスタートを実現し、長期的な定着にも寄与することが期待されています。

学習から生活支援までAI活用を広げる

既に活用が始まっているAI技術を、今後はさらに活用し、学習評価から生活支援まで一貫してサポートする体制を構想していると紹介されました。
また、AIツールは外国人材だけでなく日本人側も使用することで、言葉の壁を乗り越えた相互のコミュニケーションに活躍が期待されます。
こうした体制により、働く前も後も切れ目なく支援し、外国人材と受入れ企業双方の「不安」を最小化することが可能となります。

あたらしい未来をつくる

セミナーの締めくくりで鈴木氏は、
「活躍できる人たちがいます。活躍の場を一緒に創って、あたらしい未来をつくっていきましょう」と語りました。
人口減少が進む日本において、ビルメンテナンス業が持続していくためには、外国人材との協働は “必要だから受け入れる” 段階を超え、企業が未来に向けて競争力を維持するための戦略そのものとなっています。
本セミナーは、その実践的なアプローチと、具体策が詰まった内容でした。
ビルメン業界はもちろん、外国人材の活用を考えるすべての企業にとって大きな示唆を与えるものとなりました。

【講演講師】
■東急ビルメンテナンス株式会社 常務取締役
 Global Gateway Japan株式会社 取締役副社長 鈴木 志 氏
■一般財団法人建築物管理訓練センター 事務局長 渡辺貴之 氏