ビルメン×ドローン最前線 現場のプロ3人が語るリアルと未来 <後半>

現場の課題やドローン活用の実例についてお届けした前半は、いかがでしたでしょうか。
ビルメンテナンス業界におけるドローン活用のメリットや、点検・洗浄業務の効率化、安全性向上の可能性を感じていただけたのではないでしょうか。
後半では、ドローン導入が企業にもたらす新たな強みや、これからのビルメンテナンス業界に求められるあり方について、さらに深くお話を伺いました。
登壇者情報
営業統括本部 営業推進部 部長
上瀧 秀貴 氏
山崎産業にて、ビルメンテナンス業界を中心に業務用消耗品の提案や、清掃現場の効率化・省人化に向けたソリューション提案を担当。効率化を目指した清掃資機材の開発やIoT等の新技術を活用した現場改善にも携わり、ビルメンテナンス事業者の生産性向上や人手不足対策を支援している。
代表取締役
府川 雅彦 氏
代表取締役
岩岡 真吾 氏
Q3 使う会社と使わない会社の差
ドローンを活用する会社と、これまで通りの方法を続ける会社で、今後どんな差が出てくると考えていますか?
例えば、受注できる仕事の幅、安全面、顧客への提案力などで、差が出てくる可能性はありますか?
【差別化】限られた人員で成果を最大化、ドローンとデータ活用の可能性
司会:上瀧さん、どのようにお考えでしょうか?
上瀧:そうですね。ちょっと繰り返しになるかもしれないですけど、やっぱり限られた人数で最大のパフォーマンスを出せるかどうか、というところですね。
その一つの手段として、ドローンを使えるか使えないかというのは、かなり大きな差になってくるんじゃないかなと思っています。
それと、集めたデータをどう活用するかという点もあると思います。今まで集めたデータをどう処理して、どう提案に活かしていくかですね。
これはドローンに限った話ではないのかもしれませんが、集めたデータを活用して提案につなげていくことができれば、提案のスピードも上がるでしょうし、お客様に対してより具体的な提案ができるようになると思います。
そうなれば、これはあくまで想像ですけれども、成約率にも影響してくるんじゃないかなと思っています。
受注できる仕事の幅であったり、安全面であったり、提案の仕方であったり、いろいろな部分で少しずつ差が出てくるのではないかな、というふうに思っています。

【選択肢の幅】使える状態にしておくことが、企業の強さになる
司会:府川様はいかがでしょうか?
府川:そうですね。先ほど岩岡さんもお話しされていた通り、ドローンがすべてに有効なわけでもなければ、今までのやり方を全部代替できるとも思っていません。
あくまで一つの手段なんですよね。
「ドローンのほうがいい場面もあるよね」という話であって、実際にそういう場面は結構あります。
これはビルメン業界に限った話ではないんですが、新しいツールや技術をいかに取り入れていくかというところは、この流動性のある時代の中で、企業としての強さにも弱さにも関わってくると思うんです。
ドローンを使ったほうが便利な場面があるのは、もう間違いないですよね。一方で、向いていない場所は使わなければいいだけの話です。
だから大事なのは、その選択肢の幅を持っているかどうかだと思っています。
先ほど上瀧さんがおっしゃった提案の幅という話にもつながりますが、「こういう方法もありますよ」と提案できること自体が価値になると思うんです。
僕自身は、もっとライトな感覚でいいと思っています。「ドローンという選択肢を一つ持っておけばいいじゃないですか」という考えなんです。
逆に、便利なものなのに選択肢として持たない理由があまり分からないんですよね。
ただ、どうしてもこうしたレガシーな業界は昔からのやり方が根付いている部分もありますし、新しいものに対してアレルギーを持たれることも少なくありません。ドローンもそう見られがちなところはあります。
でも実際は、そんなに大層なものではないんです(笑)。
「特別なもの」というよりは、「必要な時に使える道具が一つ増える」くらいの感覚で捉えてもらえればいいのかなと思っています(笑)。
そういう意味では、ドローンを使うか使わないかではなく、使える状態にしておくこと自体が、企業の強さの一つになっていくと思いますね。

【安全を守る力】「落ちない」ではなく、「落ちたとき」に備える
司会:岩岡様はいかがでしょうか?
岩岡:そうですね。差についてはやっぱり出るんじゃないかなと思っています。
当然、受けられる仕事の幅ということで言えば、高圧洗浄をしている会社さんであれば、「高いところもできますか」と聞かれたときに、ドローンがあれば対応できますよと。
また、複雑な構造の場所にも対応できるということで、仕事の幅は広げていけるのではないかと思っています。
最も大事なのは安全の部分かなと思っていまして、新しいことなので、一番よく聞かれるのは「これ、落ちないの?」「落ちたらどうなるの?」ということです。
当然そういった不安は出てくると思います。ただ、空を飛ぶ機械なので、100パーセント落ちないとは言い切れません。
だからこそ、落ちた場合を想定して、そのリスクがどれくらいなのか、保険も含めて被害が出たとしてもこれくらいだということを、きちんと丁寧に説明し、理解を得ていくことが大事かなと思っています。
おそらく、どこかでは事故は起こると思います。ただ、そのときに準備しているかしていないかで、そこで終わってしまうのか、継続して受け入れられるのかは決まると思うんです。
今、洗浄分野で先陣を切って取り組んでいる会社の一社としては、その部分ですね。
ドローンを知らない業界の方々に、「ドローンは大丈夫なんだ」と理解していただけるよう、一緒に認識を広げていけたらと考えています。
提案力のところは、お二人がおっしゃった通りで、ドローンやAIを活用することで、これまでできなかったことが効率的にできるようになるというのは、とても大きいと思います。
全部ではなくても、一部でもドローンを導入していくことは、今後大きな強みになるんじゃないかなと考えています。

Q4 ビルメン会社は何から始めるべき?
ドローン活用に興味があるビルメン会社が、最初に取り組むなら何がおすすめですか?
皆さま:これが一番難しいですね(笑)
司会:すみません💦(笑)難しいテーマですが、上瀧様いかがでしょうか?
機体購入より先に「業務の棚卸し」を
上瀧:本当に難しいテーマだとは思うんですけれども、まず、やるべきでないことは「とりあえず機体を買うこと」だと思います。
「まずは買ってみよう」から入ると、結局使い方が分からなくて、そのまま置きっぱなしになってしまうケースもあると思うんですよね。
なので、最初にやるべきことは、仕事の棚卸しじゃないかなと思います。
今どんな作業をしているのか。どこに危険があるのか。誰がその作業を担当しているのか。そういった業務を一度整理してみることですね。
その上で、「これはドローンでできないか」「これはロボットの方がいいんじゃないか」「これはIoTが活用できるんじゃないか」という視点で見直していく。まずはそういうところから始めるのがいいんじゃないかなと思います。
ロボットもそうだったと思うんですよね。IoTも同じで、そうやって少しずつ現場に受け入れられて広がってきたのではないかと思います。
そういった取り組み方がまずはいいんじゃないでしょうか。
その結果として、「これはドローンに任せられそうだな」とか、「点検で使えそうだな」「洗浄で使えそうだな」という話になってくれば、そこで我々のような会社がご提案をさせていただく、という流れになるのかなと思います。
始めるべきことは、まず業務の棚卸しですね。私はそう思います。
まずは一度、試してみる
司会:府川様はどうでしょう?
府川:そうですね。上瀧さんがおっしゃる通りで、まずは棚卸しだなと思います。
ドローンもそうですし、AIもそうなんですけど、まずは今ある業務の中で、「新しい技術を使ったら何が効率化できるのか」「何がコストカットできるのか」を整理することが大事だと思うんです。
そうすると、その中にドローンが当てはまる業務が出てくると思います。
特に点検や洗浄の分野は比較的導入しやすい領域だと思いますし、基本的には非接触で行う作業なので、リスクもそれほど高くありません。もちろん洗浄は水を使いますが、機体が建物に接触するわけではありませんし、作業時は第三者が立ち入らない環境を確保した上で実施します。
正直、私たちもこれまで機体を落としたことはありませんし、安全面で見ても導入しやすい分野だと思います。
なので、業務を棚卸しした結果、「ここは使えるよね」というところが出てくれば、ビルメンテナンス業界であれば点検や洗浄といった領域は候補になってくると思います。
そうなった時に、逆に「やらない理由は何なんだろう」という感じなんですよね(笑)。
価格は下がる。安全性は上がる。工期は短くなる。データも取れる。
じゃあ、なぜ使わないんだろうと。
もちろん、新しいものを導入するとなると、担当者の方には責任がありますし、社内調整も必要です。そこに一定の労力がかかるというのはよく分かります。
ただ、その部分だけ少し頑張っていただければ、導入した後はそこまでハードルの高いものではない、ということは理解していただけると思います。
これは別に「仕事をください」という話ではなくて、もちろんご相談いただければうれしいですが、純粋にその方が現場にとってプラスになると思っているんです。
なので、まずは一回、物は試しでやってみる。そこから始めてみるのがいいんじゃないかなと思っています。
まずは一部分から試してみる
司会:ありがとうございます。岩岡様はいかがですか?
岩岡:そうですね。何から始めるべきかという点では、上瀧さんがおっしゃった「業務の棚卸し」がまず必要だと思います。
まずは、自社の業務の中で何ができていて、何が課題なのかを把握することですね。その上で、これまでできなかったことや、例えば洗浄の観点でいうと「ここは今まで洗えなかったよね」という場所があれば、まずはそういうところから試してみるのがいいんじゃないかなと思います。
府川さんもおっしゃっていましたが、リスクという面では、ものすごく大きな機体を使うわけではありませんし、基本的には非接触で作業を行います。そういう意味では、洗浄や点検はドローン活用の中でも比較的導入しやすい分野だと思います。
ですので、「興味はあるけれど、いきなり本格導入は不安だ」という場合でも、まずは小さく試してみるところから始めればいいと思います。
実際に当社でも、最初からビル全体を対象にするのではなく、一部分だけをデモンストレーションとして実施し、効果を確認していただいてから次のステップに進むという形をご提案しています。
そういう意味では、導入のハードルは以前よりかなり下がっていると思いますし、「これはいいかもしれない」と感じたら、まずは一度試してみるというのが一番ではないでしょうか。
ビルメン業界の読者のみなさまへメッセージをお願いします。
司会:まずは上瀧様からお願いいたします。
上瀧:要は、人を減らすための技術ではないということですね。
今でいうとサステナビリティ、つまり業界を持続可能なものにしていくための技術として捉えていただきたいと思っています。
人手不足が進む中で、限られた人員でもしっかり仕事を続けていく。そのための支援策の一つとして受け入れていただければと思います。
司会:続いて、府川様お願いいたします。
府川:そうですね。ドローン事業者の立場からすると、先ほどから何度かお話ししている通り、ドローンに対するハードルをあまり上げないでほしいな、というのがあります。
もっと気軽に試してもらっていいんじゃないかなと思っています。
私自身、ドローン業界に長く関わっていますが、この10年で何かまったく新しいことができるようになったかというと、実はそこまでではないんですよね。10年前の機体でも、写真を撮ったり点検に活用したりすること自体はできていました。
では何が進化したかというと、やはり安全性です。センサーや制御技術が進化して、実務で使う際にいかに事故を起こさないかという部分が大きく向上しました。
ドローンというと、「空を飛ぶから怖い」というイメージを持たれる方もいると思います。ただ、少なくとも真面目に事業をやっているドローン事業者が一番気を使っているのは安全性なんです。
事故を起こしてしまったら、お客様にもご迷惑をかけますし、事業者としても成り立たなくなってしまいます。だからこそ、安全管理には非常に力を入れています。
結局のところ、安全な技術を使って効率よく作業ができるようになるという、シンプルな話なんですよね。
それと、私たちは「今あるやり方を全部ドローンに変えましょう」と言っているわけではありません。
業務の20%なのか、70%なのか、あるいは一部だけなのかは分かりませんが、「この部分はドローンを使った方が便利ですよね」という話をしているだけなんです。
ですので、もっとライトな感覚で捉えていただければと思います。
ビルメンテナンス業界でも、今後ドローンというキーワードは間違いなく出続けると思います。そのときに、あまりアレルギーを持たずに見てもらえたらうれしいですね。
司会:最後に、岩岡様お願いいたします。
岩岡:ビルメンテナンス業界の皆さまにお伝えしたいのは、ドローンは既存の仕事を置き換えるものというよりも、今よりもっと良い仕事をするための一つの道具だということです。
そして、人が危険な思いをしなくても作業ができるようになるツールでもあります。
ただ、やはり実際に見たり使ったりしてみないと分からない部分も多いと思います。
ですので、私たちとしても、ビルメンテナンス業界の皆さまに事例をご紹介したり、実際のデモンストレーションを行ったりしながら、現場での活用イメージを持っていただけるよう取り組んでいきたいと考えています。
そうした活動を通じて、業界への普及に少しでも貢献できればと思っています。
司会:ありがとうございました。今回のお話を通じて、ドローンは従来の作業をすべて置き換えるものではなく、人手不足や安全性向上、効率化といった課題に対応するための新たな選択肢であることがよく分かりました。今後のビルメンテナンス業界における活用の広がりに期待したいと思います。
皆さま、本対談はいかがだったでしょうか。
人手不足や安全性向上、業務効率化など、ビルメンテナンス業界を取り巻く環境は大きく変化しています。ドローン活用も、その変化に対応するための選択肢の一つとして注目されています。そこで、ぜひ皆さまの現場の声をお聞かせください。
ドローンに限らず、人手不足への対応、安全管理、業務効率化、新たな技術の導入などについて、現場で感じている課題や困りごと、知りたいこと、導入時につまずいた経験などがありましたら、ぜひコメントをお寄せください。
また、「こんな事例が知りたい」「こうした特集を読んでみたい」といったご要望も歓迎いたします。
皆さまからいただいた声は、今後のセミナーや記事制作の参考にさせていただきます。お気軽にご意見をお寄せください。よろしくお願いいたします!
取材協力
山崎産業株式会社
清掃用品・衛生用品・清掃機器などを幅広く手掛ける総合環境用品メーカー。「CONDOR」ブランドを展開し、ビルメンテナンスをはじめとする施設管理の現場を支えている。近年は、IoTなどの技術も取り入れ、清掃現場の省人化・業務効率化にも取り組んでいる。清掃用品・清掃機器、衛生用品、施設用品、清掃ロボット、IoTを活用した現場支援などを展開している。
株式会社ドローン・フロンティア
建築物の点検・調査を中心に、ドローンを活用した建物管理・点検サービスを展開するドローン専門企業。外壁や屋根の調査をはじめ、高所における建物調査の効率化を支援している。また、ドローンの教育や企業への導入支援にも取り組んでいる。赤外線外壁調査、屋根調査、屋根はかる君、屋内点検、ドローンスクール、ドローン導入コンサルティングなどを展開している。
株式会社TRIPLE7
ドローン高圧洗浄のパイオニアとして、国内トップクラスの施工実績を誇る専門企業。元国際線パイロットの高度な安全管理ノウハウを活かし、他社にはない安全かつ効率的な実務運用を行う。また、ドローンポートを活用した遠隔自動巡回による施設の防犯対策にも取り組んでいる。高圧洗浄ドローン、防犯ソリューション、「NAPAドローンアカデミー」、ドローン導入支援などを展開している。
取材場所
山崎産業株式会社 東京総合センタービル(東京都江東区新砂)
