2026年現在、外国人材はビルメンテナンスの現場における貴重なリソースである。彼らの能力を生かすことに見事成功した現場は、今や業界に数多い。
その代表が、横浜市を拠点とするキョーエーメック。ケイミックスホールディングスグループの一員として、外国人材の受け入れにおいてこの業界を力強く牽引した存在である。
文=文藝春秋メディア・プロデュース室 撮影=橋本 篤(文藝春秋)
ベトナムから来日した契機と本邦での第一歩
ベトナムから来日し、同社で7~8年にわたって勤務を続けるグエン・チョン・タオさんとホアン・ドゥック・ティンさん。二人は日本人でもパスすることが難しいとされるビルクリーニング技能士1級の検定に合格を果たしている。
タオ私は2018年2月に日本にやってきました。ホーチミンでの面接は通訳を伴って行われ、日本語は、その後になってから勉強したんです。そして、6カ月ほど研修を受けた後に、来日しました。日本はとても清潔で、安全な国。礼儀正しく、親切な人々にも魅力がありますね。
ティン私が日本に渡航したのは、2019年2月のこと。タオさん同様に、採用が決まってから、ベトナムで日本語を学び、ビルメンテナンスの研修を重ねました。ベトナムにいた頃、「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」など、日本のドラマをよく観ていたので、日本には憧れがあったんです。来日後、初めて雪を見た時は、きれいだなあと感激したことを覚えています(笑)。
難関の特定技能2号評価試験に合格
二人は、日本語能力試験の最上位レベルN1に、来日からわずか2年以内に独学で合格。試験対策として、ボランティアが指導する日本語教室にも通いながら、難関を突破したという。その報告を受けた社長も、大いに驚いたと振り返る。現在は、ごく流暢な日本語でコミュニケーションを展開しながら、日々の仕事に邁進している。
それらに加え、二人は、来日以降、2026年3月至るまで、下記の資格を取得している。
- 2020年12月
- 日本語能力試験(JLPT) N1
- 2024年6月
- 第1回ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験
- 2025年3月
- ビルクリーニング技能士1級
上記の通り、二人は、外国人材を対象に実施された第1回ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験に晴れて合格を果たした。この資格の保有者には、現場責任者の役割が期待され、管理職に登用されることも可能となる。
なお、建設業、農業、漁業、外食業など、計11分野に適用される特定技能2号であるが、なかでもビルクリーニングというジャンルでの試験は、求められる知識やスキルが多岐にわたり、指折りの難関として知られるという。
そして、この資格の取得には、在留期間の更新回数が無制限となったり、出身国からの家族の帯同も可能になったりするなど、数々のメリットが伴う。
ちなみに、ケイミックスホールディングスグループ全体としては、ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験に関し、2026年3月までに10名の合格者を輩出している。
資格を活かした業務と現場での活躍
次々に資格を取得した二人は、今、現場の責任者として指示や指導を行う立場にある。さまざまな局面においては苦労もあるようだが、努力を厭わない持ち前の性格で、一つ一つ乗り越えてきた。
タオ現在は、首都圏のさまざまな施設の清掃業務を担当しています。出勤調整、作業内容の確認、安全指導、そして報告なども行います。常に心がけているのは、やはり、チームがミスなく仕事をできるようにということですね。その成果として、現場が上手く回った時は、本当にうれしく感じます。現在、ベトナム人の後輩たちに対しては、ビルクリーニング技能士の各級、さらには特定技能2号評価試験に合格することができるよう、教育に努めています。
ティン昨年、ある商業施設のオープンに立ち上げメンバーとして参加したことは、とても印象に残っています。人手不足が続き、なかなか従業員が定着しなかったのですが、他の現場の責任者に応援をお願いし、シフトの調整を行ったりしました。いろいろと大変なものの、周囲の信頼を得て、責任の範囲が広がることは、大きな喜びですね。2025年からは、代行責任者として、工程表作成やその変更などの作業計画、作業管理、棚卸しなどの在庫管理、作業後の点検をはじめとする品質管理、シフト作成や面接や新人教育も含む労務管理、そして顧客との折衝などを、上司に指示を仰ぎながら行っています。
住環境整備などの手厚いサポートが鍵
タオさんとティンさんの成長を支えたのは、住環境の整備をはじめとする手厚いサポート。二人に会社の魅力を尋ねたところ、「熱心に支援してくれる」「自分の希望を聞いてくれる」と、こぼれるような笑顔で答えてくれた。
現在、キョーエーメックでは、約70人の外国人社員が働いており、全員がベトナム人。特定技能2号を取得している社員も6名いる。外国人社員の離職率は低いのだという。
彼らを支えるキョーエーメック代表取締役社長の山口拓郎さんと第二事業部業務管理課課長の田口智弘さんにも話を聞いた。
山口ベトナム人を採用することになったのは、当グループがベトナムに進出したことがきっかけ。将来、日本のビルメン業界が人手不足になることは明白でしたから、積極的に計画を進めました。このプロジェクトにおいて、初めて日本の土を踏んで一緒に仕事をしたのはタオさん。それが2018年のことでした。当時から、ベトナム人技能実習生・特定技能社員に対しては、専用の宿舎を用意したり、各種試験への挑戦を奨励したりと、できる限りの支援を行っています。
現場においてタオさんやティンさんとともに業務に当たる田口さんは、ベトナム人スタッフたちの献身的な働きぶりをこう評価する。
田口外国人と働くことは、コミュニケーションの点で最初こそ不安でした。しかし、彼らは、他のメンバーに対して感謝の言葉や挨拶を欠かさない。だから、職場の雰囲気が明るくなりましたね。ベトナム人従業員は、指示に従って非常に真面目に、そして一生懸命に仕事に取り組む姿勢が光ります。ただ、状況に応じた判断や自主的な行動に関しては、ちょっと苦手なところがある。一方、日本人従業員は、全体の流れや連携を考えながら丁寧に動くことが得意ですが、慎重すぎて行動が遅くなることがあります。両者の長所を生かし、柔軟かつ効率的なチームを作ることが大事だと思いますね。今や、外国人抜きにしては、現場は成り立たないほどです。
田口さんは、タオさんやティンさんの日頃の様子や印象に残るエピソードを披露するとともに、今後の外国人材の採用方針についても語ってくれた。
田口二人からは、彼らの寮にご飯に誘われたりします。たぶん、差し入れ目当てだけどね(笑)。他の外国人従業員もそうだけど、いつも、こちらの荷物を「私が持ちます」なんて言って、手伝ってくれる。その気遣いや優しさがとてもうれしいんです。これからも、外国人の働き手が長く安心して働けるように、生活面や職場環境に対するサポートを充実させることが重要だと思います。そういった勤務体制が整えば、現場の戦力としてさらに活躍してもらえるだろうと信じています。
タオさんとティンさんが刻み込んだ確かな実績もあって、外国人材への期待は高まるばかり。その二人の、これからの抱負というと?
タオお客さまから「いつもきれいにしてくれてありがとう」と声をかけられた時は、自分の仕事が人の役に立っているんだなと感激しました。だから、今後も頑張って、できるだけ長く、日本で働きたい。いずれは永住権を得たいと思っています。
ティン2号の資格取得後は、任される仕事も増えたので、より楽しんで働くことができています。今の目標は、外国人初の管理職に就くことですね。ベトナムから来た後輩たちの目標になれるよう、努力したいと考えています。
海を越えた若い力が、ビルメンテナンスの未来に活気と希望を与える。
