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メディア記事

#06ビル新聞2018年7月2日掲載

日本空調システムクリーニング協会
創立30周年記念「ビル空気環境表彰」を創設

~第1回大賞はパレスサイドビル~

 

  (一社)日本空調システムクリーニング協会(吉田正広会長、略称JADCA)は6月4日、東京都千代田区のホテルルポール麹町で、協会設立30周年を記念して創設した「ビル空気環境表彰」の第1回表彰式を行った。建築物内空気環境の維持管理に重点を置いた審査が行われ、大賞には東京都千代田区のパレスサイドビルディング(占有者=㈱毎日ビルディング)、優秀賞には東京都港区の東京倶楽部会館(同=東京倶楽部)が選ばれた。当日は平成30年度定時社員総会と創立30周年記念パーティーも開催され、多くの来賓とともに30周年を祝った。


 「ビル空気環境表彰」は、居住者にとって安全で健康的な室内空気環境の実現に努力している特定建築物を顕彰するとともに、室内空気環境の維持管理の重要性を広く知ってもらうためJADCAが創設した表彰制度。対象建築物は、建築後10年以上経過した建築物環境衛生制度の特定建築物(複合ビルの場合は主な用途の一部のみでも可)で、空気環境とその管理体制について評価を行う。


 

 評価項目は「環境機能」と「保守機能」。 環境機能は建築物衛生法で2カ月以内ごとに1回の定期測定が義務付けられている6項目で、「安全性(健康)」に関する3項目(CO、CO2、浮遊粉塵濃度)と、「快適性」に関する3項目(温度、湿度、気流)の測定結果を評価。保守機能については「清掃管理」(環境性能を維持・向上させるべきメンテナンスがなされているか)と、「維持管理」(予防保全の観点から長期的な整備計画がなされているか、環境への取り組みは行っているか)について審査する。


 審査はJADCA内に設置した評価認定委員会が候補物件を選定・推薦。書類審査、現地審査を経て審査委員会(委員長=川瀬貴晴・千葉大学グランフェロー)が受賞物件を決定する。表彰は毎年行われるものではなく、次回の実施時期は未定。


 審査の概要と総評を説明した柳宇・審査委員会副委員長(工学院大学教授)は、評価認定委員会が平成28年7月から9回にわたって詳細な審議を行ったこと、20年ほど前に設けられた「おいしい空気研究会」が今回の表彰の源流となっていること、研究会ではおいしい空気とは何かといった議論が行われたことなどを紹介。「おいしい空気には定義がない。人間は1日に空気を15㎏も吸っており、その8割・12㎏が室内の空気だといわれる。室内の空気が私たちの健康に大きな影響を及ぼしていることを考えると、今回の表彰は非常に意義のある啓発的な活動だと思う。是非今後も広めていただき、空気の重要さへの認識を普及させていただきたい」と語った。


 大賞を受賞したパレスサイドビルディングは1966年10月に開館した今年で満52年を迎えるビル。地上9階建てで高さは50m。東西に長く両端に白い円柱コアがある特徴的なデザインで、このエリアのランドマーク的存在となっている。


 空調系統は二重ダクト方式と低風量の単一ダクト方式が全部で94系統あり、それを定期的に清掃している。近年はマルチ型空調機の臭気等に関する苦情があり、年2回のフィルター清掃に加え、室内機・室外機の洗浄も定期的に行っている。また省エネ対応でもIAQ(室内空気質)との両立に努めている。


 優秀賞の東京倶楽部会館は、国際親善と会員相互の親睦を目的とし施設。冬場の加湿不足に対応するための加湿モジュール増強、空調機内部のコイル洗浄、より温度管理をしやすくするダクトゾーンへの変更、空調配管の劣化診断など、計画的な維持管理を行っている。両物件とも清掃・整備・管理に対する高い意識、極めて積極的な努力が高く評価され、受賞となった


 吉田会長から表彰状と記念の楯が贈られた後、大賞を受賞した㈱毎日ビルディングの原敏郎社長は受賞の喜びを語った上で、これまでも同ビルがBELCA賞(ロングライフ部門、1992年)やドコモモの近代主義建築20選(1999年)に選ばれたことを紹介。「こういった賞をいただけたのは、基本的に地道にメンテナンスを続けた、それに尽きるのではないかと思う」との認識を示した。


 また最近、雑誌等で多く取り上げられていることについて、「非常にありがたいことだが、どちらかというとビル内外の意匠性に着目した取り上げ方が多かった。それに比べて、今回はビルの中身に高い評価を得た。これは、日々メンテナンスに携わっている当社や、委託先の社員にとって非常に大きな励み・誇りになる。同時に、これからもテナントや来館者に快適な環境を提供していかなければならないという重大な責任を負ったということだ」と語った。


 表彰式終了後には第2部として末光眞二専務理事が『建築物の環境衛生』と題して講演。建築物衛生法に基づく空気環境の調整について、浮遊粉塵量は禁煙・分煙の進展により不適率が低下していること、相対湿度は冬場40%を超えると結露が生じ対応が難しいこと、換気不足や省エネ(気密化)によりCO2濃度の不適率が上昇していることなど、最近の傾向を分析して紹介。今回の表彰を機に「空気環境の大切さ」「空調設備が清浄であることの大切さ」をもっと発信していこうと呼びかけた。

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